大きな声で鳴いていた部長。猫アレルギーがあるようだ(撮影/写真映像部・和仁貢介)

地元と連携して息の長い支援を

 香取さんが心掛けていることがある。 自治体や地元の団体と連携して、地道で息の長い支援を行うことだ。

 連れてきたたちは動物病院とも連携してメディカルチェックを行った。スムーズに受け入れることができたのは、行政やボランティア団体、動物病院などとこれまで丁寧に構築してきたネットワークがあったからだ。

 協力を呼びかけることも重要だ。昨年、「能登半島の被災猫を保護し、医療にかけ、譲渡につなぐ。」をテーマに立ち上げたクラウドファンディングでは、目標額850万円に対して1500万円超が集まった。

「猫たちも、理解の深い方々が引き取ってくれています。第一陣として石川県からやってきた11歳の猫ツナは、俳優のいとうまい子さん夫妻のところに縁付きました」

 シェルターのケージにはネームカードが貼られ、来歴やチャームポイントが記されていた。壁面に貼られた写真の数々は、「保護猫」「被災猫」というより、「たった一匹の猫」の大切な記録だとわかる。猫たちの表情は、家族に見せるような豊かさがあった。

「発災から1年以上が経ち、能登半島の復旧・復興にあまりに時間がかかっていることを痛感しています。人の命が一番大切なときに、動物まで手は回らないというかもしれません。でも、余裕があるときだけの愛護でいいのか。被災動物のための取り組みはまだこれから。なんとしても続けます」

 香取さんは猫たちに優しい目を向けながら、「この1年、さまざまな縁ができて心が通った」と笑顔を見せた。

編集部 澤志保

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