
トランプ大統領就任から1カ月が経過した。トランプ氏は、これまで国際社会が積み上げてきた価値観やルールを一晩で覆すような政策を次々と打ち出している。この米国の方針転換の波に日本も飲み込まれてしまうのか。シンクタンク「新外交イニシアティブ(ND)」代表で、弁護士(日本・ニューヨーク州)の猿田佐世さんが寄稿した。
【写真】もしかして目が笑っていない?石破首相と握手するトランプ氏の笑顔
* * *
毎朝、目を覚ますとスマホでニュースをチェックする。日本が夜の間にトランプ政権が何をしたのか確認する。そして、驚いたり、憤ったり、あきれたり……という日々が続いている。
トランプ氏の大統領就任から1カ月、実にたくさんの大統領令が発布され、世界をたじろがせる多くの発言がなされた。打ち出された新政策は全貌が追えないほど多岐にわたる。
グリーンランドを所有し、パナマ運河の返還を主張し、米国がガザを所有してパレスチナ人を追い出す。WHO(世界保健機関)やパリ協定を脱退する。多様性・公平性・包摂性(DEI)政策の撤廃、メキシコ湾をアメリカ湾と書き換えないメディアを記者会見から追放……。遂には、ウクライナ戦争はウクライナが始めた、との発言すら飛び出した。
国連に対する辛辣な対応も枚挙にいとまがない。国連人権理事会からの離脱、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の参加見直し、イスラエルが敵視する国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への拠出金も停止した。
また、この1カ月で関税で他国を脅す戦略が前面に出ることがはっきりしてきており、コロンビアやカナダ、メキシコを個別の関税で脅した後、全ての国に対しアメリカ輸入の鉄鋼製品とアルミニウムに25%関税を課すと発表し、続けて、全ての国に対して相互関税を課すとの発表がなされ、そこでは規制や商習慣などの非関税障壁も標的とされた。
あまりの変化に現地はどうなっているのだろう、と、米国の友人たちとの密なやり取りを心掛けているが、「怒涛のトランプ砲に日本は大騒ぎだよ」と話す私をしり目に、幾人かの米国人からは「今はトランプは国内問題に集中している。国際面での政策はまだまだこれからだよ」とのこと。なんてこったい!