ご機嫌を取り続けた日米首脳会談

 2月7日に行われた石破首相とトランプ大統領の日米首脳会談で、石破氏はトランプ氏を「神様から選ばれた」と絶賛。「米国を再び偉大に(Make America Great Again=MAGA)」政策を、「忘れられた人々への深い思いやり」と評する等、トランプ氏の持ち上げに徹した会談となった。

 米メディアはその様子を「日本のリーダー、関税回避のためトランプに媚びる(ワシントン・ポスト)」、「トランプを口説き落とすため、ごますりを駆使(ニューヨーク・タイムズ)」などと報じている。 

 さらに、石破氏は、日本が過去5年連続で最大の対米投資国であると売り込み、今後、さらに日本の対米投資を150兆円(1兆ドル)レベルに引き上げたり、液化天然ガス(LNG)の購入拡大を約束したりするなど、米国の貿易赤字への強い懸念を持つトランプ氏の心をくすぐる政策を幾つも持ちかけた。 

APアフロ

 結果、かつて日米同盟破棄を口走ったともされるトランプ氏から「米国は日本の安全保障に完全に寄与」「友好国、同盟国を100%守るため、抑止力を提供」との言質を取ることに成功し、米軍の抑止力の強化や自衛隊と米軍の一体化をさらに促進するとの共同声明を勝ち取った。同盟嫌いとされるトランプ氏に対し、QUAD(日米豪印)や日米韓、日米比の「準同盟」と言われる枠組みの発展をも日米共同声明に織り込むことにも成功した。

 これらの成果をもって、この日米首脳会談は「成功」との評価が日本のメディアを覆っている。

 もっとも、会談3日後の2月10日には世界中の国々への鉄鋼製品・アルミニウムへの関税が表明され、同月13日には相互関税も宣言され、これらは日本も対象に含まれている。二国間会談でのメンツこそつぶされはしなかったが、実質的には日本もトランプ砲を食らっており、今後も次々と日本にも大きな影響がある政策が躊躇なく打ち出されていくだろう。 

 石破氏は、安倍・菅・岸田各首相とはその外交姿勢を異にしており、対米自立論者であるとされる。自民党総裁選では日米地位協定の改定も政策として掲げていた。

 石破氏がそんなことはおくびにも出さずに今回の首脳会談でひたすらトランプ氏を持ち上げたのは、首相本人が言うように最初から異を唱えても無意味ということ、また、党内少数派である石破氏が米国との良好な関係を築くことで自民党右派支持層を鎮静化させたい、という思惑によるものだっただろう。また、中国外交を重視する石破政権が、中国寄りとの批判を避けるとの目的もあったと考えられる。 

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