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作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。
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私は自分のことを好奇心旺盛だとは思っていません。仕事では、働くのが好きだからこそ、やりたくないことはやらずに済むよう努めてきました。おおむね叶えられています。でも、そればかりだと、同じことの繰り返しになり飽きてしまうのも事実。
年に一度は、新しいことに取り組むようにしています。去年のそれが、ようやく形になりました。初めて翻訳した絵本が出版されたのです。
著者であるワシュティ・ハリソンさんがつけた原題は『BIG』。邦題は、編集者の方と相談して『わたしはBIG! ありのままで、かんぺき』になりました。
体の大きな女の子が主人公のお話です。女の子にとって、生まれてからしばらくは体が大きいことは良いことで、大人からも褒められました。しかし、ある時期から「大きすぎる」と揶揄されたり、年齢の平均に比べて体が大きいというだけの理由で年齢以上の振る舞いを期待されたりします。これは、心無い言葉を掛けられた女の子が、自分を自分のまま愛すると決意するまでの物語。
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翻訳のお話をいただいて『BIG』を読み、まさに子どもの頃の私だわ!と驚きました。いまでは考えられない話ですが、小学校低学年の時に「体が大きいのによく泣きます」と通信簿に書かれたことは忘れません。先生に悪意はなかったのですが……。
子どもにとって、「〇〇なのに××だ」とジャッジされること、そして「みんなと違う」と指摘されることは、大人以上に恐怖です。無自覚に否定的な意味を含んだ「違う」を、自分のなかで浄化しポジティブに変換する能力を得るには時間がかかります。私もそうでした。いまでも完璧に払拭できたとは言えません。みんな同じですよね。
私が子どもの頃、この絵本があったらどれほど気持ちが楽になったことでしょう。自己イメージの捉え直しが、もう少し早くできたかもしれません。私と同じことで悩んでいたり、立ち止まってしまったり、そんな子どもたちの役に立てるのなら、と思い引き受けました。
子ども向けの翻訳は決して簡単ではありませんでしたが、非常にやりがいのある楽しい仕事でした。こうやって、新しいことに挑戦させてもらえるのも幸運です。
良かったら、是非読んでみてください。大人も十分楽しめる内容ですよ。
※AERA 2025年2月24日号
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