
そして、淡いレモン色のワンピースと帽子、そして真珠のアクセサリーと、品のよい装いに身を包んだ雅子さまは、すっと顔を上げ、凜とした声で話し始めた。
「私からはまず殿下に『本当に私でよろしいでしょうか』と伺いました」
結婚を決意した心境について語る雅子さまの言葉は、外務省の第一線で働く女性としての芯の強さを感じさせるものだった。
「お受けいたしますからには、殿下にお幸せになっていただけるように、そして、私自身も自分で『いい人生だった』と振り返れるような人生にできるように努力したいと思います」
そして、この会見の場で明かした雅子さまへの言葉「雅子さんのことは僕が一生全力でお守りしますから」とともに、新浜の鴨場は広く知られるようになった。

目隠しされたワゴンに潜み
千葉県市川市にある新浜鴨場は、敷地面積が約20万平方メートル。広大な敷地は木々や池に囲まれており、皇族方が国内外の賓客に伝統的な鴨猟を披露してもてなす場として使われている。
一般人が自由に出入りできる場所ではないが、「皇太子さま(天皇陛下)のお妃候補」をめぐる取材合戦が過熱していた当時、鴨場での「極秘デート」を成立させるのもひと苦労だったようだ。
当時の報道などによれば、陛下が雅子さまにプロポーズした10月3日の昼ごろ、ワインレッド色の軽ワゴン車が静かに赤坂御用地を出発。黒いフィルムで目隠しされた後部座席には、頭から布を被って身を隠した陛下が潜んでおり、警察にも知らされていなかったという。
そして、ワゴン車と当時の侍従長が乗った車が向かった鴨場には、外務省職員だった雅子さまが待っていた。
まるで映画のような物々しさだが、おふたりは鴨場での「極秘デート」で穏やかな時間を過ごされたようだ。

芝生の庭でおふたりは、ちまき寿司を食べ、輪投げ遊びなどを楽しまれた。付き添いの侍従長と外務省の職員は、鴨場の建物の中から静かに見守っていたという。
おふたりはご結婚後も新浜鴨場を訪れており、95年12月には陛下と上品なパンツスーツ姿の雅子さまが、両手に抱えた鴨を放鳥。海外からの賓客を笑顔でもてなした。
そして愛子さまもご両親の思い出の場所で、とびきりの笑顔で見せてくれた。
(AERA dot.編集部・永井貴子)