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「上告断念のニュース ありがとうございます♪石破さんの言葉に感謝です」
ニューヨークに滞在中の私のスマホに入った赤木雅子さんからのショートメッセージだ。雅子さんにとって、最高のニュースであると同時に、これは、石破茂首相自身にとっても分岐点となる出来事だ。
この話は今から約8年前に遡る。
2017年2月10日に朝日新聞が、大阪の森友学園に9億5600万円相当の国有地が1億3400万円という破格の値段で売却されたことや同学園が建設を予定している小学校の名誉校長に安倍晋三首相(当時)の夫人昭恵氏が就いていることなどを報じたことから、国会などで大きく取り上げられた。
その際、安倍氏は、国会で「私や妻が関係していたということになれば、それはもう間違いなく総理大臣も国会議員もやめる」と大見得を切った。
財務省で本件を担当していた佐川宣寿理財局長(同)は、安倍氏の発言との整合性を取るため、近畿財務局に、土地売買の決裁文書などから昭恵氏の名前を消去するなどの改ざんを命じたとされる。
その作業を命じられた、雅子さんの夫で同局の職員だった赤木俊夫さんは、上司に涙ながらに直訴し、財務本省に直接メールまで送って改ざんの不当性を訴えたものの聞き入れられず、改ざんを強要された。その作業は、安倍氏の発言の直後、17年2月下旬に始まった。
その後18年3月に、朝日新聞が、財務省が森友学園への土地売却に関する決裁文書を改ざんした疑惑を初めて報道し、新たな大問題となった。
公文書改ざんを職務命令によって強要された被害者の赤木さんは鬱状態に陥った。
一方、赤木さんは非常に強靱な精神も併せ持っていた。赤木さんは、後に告発するために改ざんの経緯を克明に記録し、文書として残していたのだ。これが世に言う「赤木ファイル」だ。
その赤木さんを死に追いやった最後の一撃は、検察からの取り調べのための電話だったというのが私の見方だ。電話の内容から、自分が生贄にされるのではと考えた赤木さんは、死をもって抗議し、赤木ファイルを世に問うことを決断した。
赤木さんが遺した「最後は下部がしっぽを切られる」という言葉には、そうした意味が込められている。
赤木さんは、正義を実現するためには、死をもって告発するしかないという強い気持ちで命を絶ったと考えることができるのだ。