石破首相は雅子さんと2度面談した

 後日、雅子さんに電話をすると、雅子さんは「石破さんには、上告を止めて文書を全部開示するように財務省に命令してほしい」と語った。さらに、「最近、石破さんは変わってしまったようで不安になる時がある」と言うので、「石破さんが雅子さんのことを真剣に考えてくれているのは確かですよ、それを信じるしかないですね」と言うと、雅子さんも、「私も信じます」と力強く返事をしてくれた。

 それからわずか1日。

 石破首相が加藤勝信財務相などに上告断念を指示したというニュースが流れた。

 それを喜ぶ雅子さんから冒頭のメッセージが送られてきたのだ。

 石破首相がこの決定を下すことを予想していたものの、それは2月6日~8日の日程の訪米からの帰国後だと勝手に思い込んでいた私にとっては、嬉しい驚きだったが、雅子さんにとってはさらに飛び上がらんばかりのサプライズになったはずだ。

 私が石破氏の今回の決定を予測したのには訳がある。石破氏は、雅子さんと赤木さんに対して特別な思いを抱いているからだ。

 それを示す二つのエピソードを紹介しよう。

 雅子さんは石破首相と2度面談したことがあるが、最初に会ったのは、21年9月23日だった。自民党総裁選の最中だ。

 私は、石破氏が総裁選に立候補する可能性があるという段階で、総裁選に出るなら、安倍政治に終止符を打つという覚悟を再確認するために雅子さんに会ってもらいたいと考えてそれを提案した。総裁選直前で難しいのは承知のうえだったが、思いがけず「是非お会いしましょう」という返事が来た。推薦人が集まらず、大変な時期だったのでとても驚いたのを覚えている。

 その後、石破氏は9月15日に総裁選出馬を断念したが、雅子さんと面談したのは総裁選のオンライン政策討論会があった日だった。

 雅子さんは、「短時間会ってもらえるだけで十分です」と話していたが、面談は小一時間続いた。石破氏は、雅子さんの言葉を一度も遮ることなく真摯に耳を傾けた後、この問題は、日本の政治にとってとても大事なことだ、決して有耶無耶にして良い問題ではない、必ず真相を究明するための検証を行い、何が悪かったのかを明らかにしないと、同じ過ちを犯すことになるというような話をしていた。同席した私は、そこまで踏み込むのかと驚いた。

 雅子さんは、その時の感激を今も忘れないとよく話している。

 9月の面談の後、10月8日にも雅子さんは石破氏と面談している。私は同席していなかったが、同じような話をあらためてじっくりと話したということだ。

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