AERA 2025年2月10日号より

 副業人材の活用に手応えを感じた商工会議所はその後、人材サービスの「みらいワークス」(東京都港区)や小田原市内に工場がある「ライオン」、NPO法人「国際社会貢献センター」(ABIC、東京都千代田区)と相次いで連携。みらいワークスでは主に現役世代、ライオンからは50代の管理職経験者や技術者らベテラン人材、ABICからは海外勤務経験のある商社OBらシニア世代と、それぞれ特色のある副業人材を地元企業にあっせんする体制を築いている。

“関係人材”を増やす

「大手企業の中途採用人数が急増するなか、地域の中小企業はこれまでとは全く違う方法で人材を確保する必要があります。兼業や副業の形で企業の関係人口、すなわち“関係人材”を増やし人材力を高めていく取り組みは、とりわけ深刻な働き手不足に直面している地方の中小企業のモデルといえます」

 小田原箱根商工会議所の取り組みをこう評価するのは、リクルートワークス研究所の古屋星斗主任研究員だ。ふるさと副業・兼業の盛り上がりの背景要因について、古屋さんはコロナ禍以降、地域の中小企業にもオンラインの業務態勢の整備が進んだことや、働き方改革で大企業の社員の可処分時間が増えたことに加え、ミドルシニア層の転職志向の上昇も挙げる。

「45~54歳の転職希望者が近年急速に増えています。ミドルシニア層はいま所属している会社以外でセカンドキャリアを模索する機会が増えており、その動機は報酬だけでなく、『自分の力を試したい』『自分の知らない世界で闘ってみたい』『貢献したい』『恩返ししたい』など多様なのが特徴です」

 二拠点生活で複数の地域で暮らすのが可能なのと同様に、いま所属している企業以外に個人が関わる企業を増やすことができる。この「一人で何役も」という発想は構造的な働き手不足が深刻化するこれからの日本でますます重要になる、と古屋さんは言う。

「縁をつなぐことで互いに与え合う関係性は、地域の中小企業の経営戦略にも生かせます。働き手不足の課題に対して、これまで発想もしなかったところに解決策があるという好例が、超買い手市場のふるさと副業・兼業だということもできます」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2025年2月10日号より抜粋

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