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地域の中小企業は新卒・中途採用に苦戦しがちだが、副業・兼業には当てはまらない。副業人材は超買い手市場だという。「ふるさと副業・兼業」の現場をのぞいた。AERA 2025年2月10日号より。
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商工会議所主導で副業人材の活用に取り組む地域もある。
「経験や資格、能力を発揮して地域の課題解決にチャレンジしたいという価値基準で仕事を選ぶ優秀な人が増えていることを、副業人材募集のプロセスで実感しました」
こう振り返るのは小田原箱根商工会議所(会員数約3200社、神奈川県小田原市)の鈴木悌介会頭だ。デジタル化や業務改革は喫緊の課題だが、地元にはないスキルやネットワークをもつ高報酬の専門人材をいきなり雇用するのは現実的ではない。であれば、週1日程度のリモートワークで参画できる副業人材の力を借りようと考えた。
歴史的観光スポットを抱える小田原・箱根エリアは、地元出身者以外にも旅行やレジャーを通じて愛着をもつ人は多い。この全国有数の知名度を生かし、2022年に商工会議所の広報、業務改革、企画の3業務を民間転職サイトで募集したところ、735人の応募があった。
「副業募集の最大の利点は、求人側が人材を選べることです。選びきれないほどの応募者の中から、イメージにぴったりの即戦力人材を獲得できました」(鈴木会頭)
月5万~10万円の対価の副業ポストに、年収数千万円の応募者が競って自己アピールした。鈴木会頭が注目したのはその動機だ。面接で耳にしたのは「小田原や箱根が好きなので面白そうだと思った」「自分のキャリアにプラスになる体験ができそう」「新しいネットワークとつながれそう」「地域課題に興味がある」といった声だった。
「お金以外の理由ばかりなんです。多くの副業人材は稼ごうと思ってくるわけではなく、事業の社会的意義に魅力を感じています」(同)
大手ITなどに勤務経験のある40〜50代の3人と業務委託契約を結んだ。契約の決め手は「実務経験とリーダーシップ」だったと鈴木会頭は明かす。
「私たちが求めているのは提案だけするコンサルタントではなく、現場の課題を把握した上でチームに入ってスタッフをリードしていく、そんな役割を担ってくれる人材です。ですから、組織とは何かをよく知る実務経験と、人を動かせるリーダーシップのある人を選びました」