『すべてがFになる』などで人気の作家・森博嗣による「100の講義」シリーズ第5弾。言葉や現代の日本社会、身の回りのことをめぐる著者の独特なものの見方がユーモアある語り口で披露される。
私たちが慣習的に使っている言葉も、よく考えれば実に変だ。「穴のあいた靴下」というと人々は「使い古された靴下」だと思う。だが、靴下には新品の時から穴が開いているのだ。そうでないと足を入れることができない。おやじギャグのように聞こえる話だが、いかに「言葉が言葉どおりに通じていない」かを表している。
正確な言葉の伝達を邪魔したのは、私たちの中にある慣習だろう。森は惰性的に、慣習に従って考えるのではなく自分の頭で合理的に物事を考える方法を本書で伝えている。自分だけの視点を得られる第一歩になるはずだ。
※週刊朝日 2016年10月14日号