
社会は人に“寛容”であること、“赦す”ことを必要としている――。組織開発専門家の勅使川原真衣さんはこの、突っ走りがちな言説に立ち止まる。そもそも「誰かの許可」っているのだろうか。著書『格差の"格"ってなんですか? ――無自覚な能力主義と特権性』(朝日新聞出版) から一部抜粋・再編集して紹介する。
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赦す―― 広い心と笑顔があればいいのに? 「これからの社会に必要なこと」言説
先日、拙著『働くということ――「能力主義」を超えて』(集英社新書)ならびに『職場で傷つく――リーダーのための「傷つき」から始める組織開発』(大和書房)を読みました!!
という、とあるメディアにインタビューいただいた。とてもありがたいことなのだが、次のように尋ねられ、頭を抱えたところからのスタートとなった。
「この窮屈な社会においてこれから必要なのは、『赦(ゆる)す』ことだと思うのですが、いかがでしょうか?」
……「赦す」ですか……。
私の窮した様子が伝わるだろうか。
2冊を読んでの取材依頼ということなので、余計に不思議に思ったのもある。拙著では一貫して、「これからの時代に必要な〇〇」という言い方への疑義を示してきたつもりだったからだ。ゆえに、赦すでも何でもいいのだが、「これからはこれですよね?」とまっすぐな瞳で尋ねられると、どこから説明すべきか、たじろいでしまう。