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高齢者は増え続け、国の医療費はひっ迫の一途をたどるなか、高齢者にできることは何か。90歳を迎えた今も現役医師として週4日高齢者施設で働いている折茂肇医師は、「高齢者が果たせる務めの一つは、体が動くうちは働くこと」と語る。
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折茂医師は、東京大学医学部老年病学教室の元教授で、日本老年医学会理事長を務めていた老年医学の第一人者。自立した高齢者として日々を生き生きと過ごすための一助になればと、自身の経験を交えながら快く老いる方法を紹介した著書『90歳現役医師が実践する ほったらかし快老術』(朝日新書)を発刊した。同書の「おわりに」から一部抜粋してお届けする(第18回)。
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長寿社会となり、我々人間は昔と比べると信じられないほど長生きするようになった。しかしそれは単純に喜ばしいことばかりではなく、長生きをするということはそれだけで非常に大変なことである。「健康で長生きをすることは、人類共通の願い」と述べたが、果たして今もそういえるのだろうか。
人生100年時代を生き抜くためには「生涯現役」でいること
人生100年時代。つまり、100歳まで生きなければならない時代を生き抜くにはどうすればいいのか。そう考えたとき、私は「生涯現役でいるしかない」と思った。生きていくには働くしかない。100歳まで生きるのなら、80歳はもちろん90歳を超えても、体が動くうちは働く。私だって足が不自由だが杖をついて歩きながらも働いている。90歳だって働けるのだ。たとえ働けなくなったとしても、できるだけ若い世代の世話にならないよう、自分のことは自分でやる「自立意識」を持つことが大切だ。そういう、今の日本を生きる超高齢者としての自分の姿勢が、少しでもほかの高齢者の参考になればいいと思っていた。
そんな時、朝日新聞出版から、私の考えや、これまで実践してきた健康の秘訣をまとめて「本として出版しませんか」というお話をいただいた。
昔から、人にものを頼まれると断れない性格でもあったし、「新しいことに挑戦すること」が私の生きがいでもあるため、依頼を引き受け、本書を上梓することとなった。