本書で私が最も伝えたかったことは、「年老いても生涯現役でいよう」ということだ。細かいことにくよくよせず、「なるようになるさ」をモットーに、生きがいと社会との関わりを持ち続けることで高齢者でも元気に生きることができる。90歳になった今も医師として働き続ける私自身が書籍を出すこと自体が、「生涯現役」の証明になるのではないか。そう考えた次第である。
高齢者だからこそ、できることがある
日本では、具合が悪くなればすぐ病院に行き、医療を受けることが誰にとっても当たり前だ。それはもちろん国民にとっては良いことなのだが、当然の権利だと制度の上にあぐらをかいていていいのだろうか。高齢者は増え続け、国の医療費はひっ迫の一途をたどり、現在の健康保険制度そのものを見直さなければ財政破綻しかねない。
私は、そんな今の日本を生きる国民として、我々高齢者にも、いや、高齢者だからこそ、できることがあると考えている。その最初の一歩が、本書で述べた「発想の転換」である。高齢者になれば体のさまざまな機能が衰え、病気も増えるのは当然のことなのだから、病気があっても生活する上で支障となる機能障害がなければいい。それ以外のたいていのことはほったらかしでいいのだ。
病気があるからといってすぐ病院に行く、薬をもらうという考え方ではなく、多少の不自由があってもおおらかに受け入れ、自らの体と相談しながら本当に必要なときには医療に頼る。そういう姿勢でいれば、微力ながら医療費の負担軽減に貢献できるのではないか。そしてそれも高齢者が果たせる務めの一つなのではないかと考えるのである。