伊藤裕『老化負債 臓器の寿命はこうして決まる』(朝日新書)
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 こうすることで生活に「メリハリ」ができ、元気ハツラツが維持されます。メリハリとは、元は邦楽用語の「メリカリ(乙甲)」で、低い音を「減り(〝減り込む〞のメリ)」、高い音を「上り、甲(〝甲高い〞のカリ)」と称していたことに由来します。音の高低をうまくつけることでいいリズムが生まれ、その音楽は豊かになります。

 同じことがわれわれの体にも言えます。「リズム」は、音楽の世界で使われることが多いですが、その場合、「耳で聞く」音の連続的な変化を、脳が「リズム」として認識しています。音楽に限らず声に出す言葉や目で読む文章、また、われわれの体の動き、運動競技や舞踏などでも使われます。肌ざわりや舌ざわりなども、細かい触覚の変化のリズムですし、食べることも、食物を反復して噛む中で、さまざまな栄養素が取り出されそれを味わっているわけで、味覚のリズムだと思います。

 いずれもわれわれの身体が「聞く」「話す」「見る」「動く」「触る」「味わう」などの行為を行うことで得られた感覚を脳がリズムとして意識します。

 ここで、それらの感覚が、ひとかたまりの一定のパターンとして「くりかえされる」ことが大切です。

 反復されることで、脳はそのくりかえしを記憶して、次にまた同じようなことが起こることを予測でき、その予測が見事に当たる、あるいは、ときには適度にうまく裏切られることで、なつかしさ、的中感(「どや!」感)、目新しさなどを覚えます。

 こうした感覚は、脳に心地よさを生み出します。その結果、気持ちがリラックスして心身は健康になります。ですから、われわれは本能的にいいリズムを求めます。「リズムを感じる」と思わず、そのリズムに合わせて体が動く、踊り出す、歌い出すというのも、リズムを体が求めているからです。

 われわれの生活のルーティンのリズムは、1日24時間、1週間7日間、1年間365日の中で波の動きを示します。

たとえば血圧も、朝に高く夜寝ている時に低くなります、仕事が始まる月曜に高い人が多く、週末には下がる人が多いです。また、夏に比べて冬に高くなります。季節の移り変わりを通じて、温度、光の量は変わり、それを体は敏感に感じ取って調子が変わります。それぞれの周期の間隔で、3〜5回(周期)ほど、自分の習慣行動、自分の体の調子を意識して観察し、そのリズムを知ることをお勧めします。

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想定外に備えるために