大学での「研究」も止まってしまった
その研究者は、こう嘆いた。
「トランプが大統領になって政治的には大変なことが起きるかもしれないが、我々研究者にとってはあまり関係がないだろうと思っていた。でもそれは、とんでもない間違いだった。研究内容がこんな形で制約されるなんて周りでも誰も予想していなかった。もっとちゃんと反トランプ運動に参加しておけばよかった。これからどうしたらいいんだろう。とても不安だ」
確かにトランプ氏の思想を正しく理解していれば、そういうことが起きても何ら驚くことはないのだが、事前にそれに全く思いが及んでいなかった私は、この話を聞いて衝撃を受けた。
そして、「トランプ大統領がやっていることは大変な思想統制につながっていく」ということに気づかされた。
倫理規範が崩壊した社会で倫理観のかけらもない権力者が思想統制を強めるアメリカという国はどこに向かうのだろうか。
ジェンダー以外にも、反移民、反中国人などのヘイトやテロが起きる可能性が高まるだろうという懸念も頭をもたげる。そう考えると、ニューヨークの街を歩くにも昨年の夏とは違った緊張感を抱くことになった。
昨年はとても楽しい気分で見ることができたプライド・パレードだったが、今年は、近づかない方が良いという悲しい雰囲気が広がるかもしれない。
運良くこれが杞憂に終わったとしても、喜ぶわけにはいかない。そのような気持ちにさせられること自体が、大変な悲劇だ。
そんな国はもはやアメリカではない。
アメリカに来て2日後。そう感じた。