「CDが売れないと言われるけれど、iPodや着メロで分かるように、音楽ビジネスには一定のパイがある。ポニーキャニオンを大きくしたら、ボクらは音楽配信のところでかかわっていく。ネット業界に詳しい人を、経営幹部に起用するかもしれませんね」
 

 グループ資産の「有効活用」も課題と考える。

「一等地の不動産を持っている必要はありません。東京・大手町のビルやフジテレビの社屋などは、証券化して売り払い、家賃を払うことにすればいい。売却によって得た資金は、M&Aなどの事業投資に回せます」

 持つ必然性が薄いグループ企業の株式は当然売る。たとえばシステム子会社は、専業の会社に持ち分の一定割合を売却すればいい。
 フジ系列の地方放送局もその対象だ。

「(出資比率規制があるため)過半数に遠く及ばない持ち分しかないが、ネットワークが維持できている。それなら、そもそも株を持つ意味がない。株を持ってもらっていないからといって、ネットワークを抜ける地方局は考えにくいでしょ」

相手には歓迎の声も


 ベイスターズとヤクルトという二つの球団会社の株もあるが、どちらも少数株主にすぎない。


「これも意味がない。どちらか一つに絞るべきです」


 こうした過激ともいえる再編策を遂行したとしても、現在のグループ各社の社長更迭や社員のリストラはしないと強調する。

「給料は下がる人は出てくるかもしれませんよ。でも業績によっては上がる人も出てくる」

こんな堀江構想に、「今の若者に受けるトレンドが何かを察知する力は、ライブドアのほうがフジサンケイグループより一枚上手」(扶桑社社員)、「ブランドと安定性ではフジだけど、成長性と可能性はライブドアかな。どちらの子会社になっても、今のニッポン放送より良くなりそう」(ニッポン放送社員)と、グループ内には意外に好意的な声がある。

 自社株を買ってきたニッポン放送社員の間では、株価高騰によって「どうする売る?」「もう少し待つ?」
と、メールなどでひそひそ話が飛び交ってもいる。
 とはいっても、今の段階では、堀江氏の「絵に描いたモチ」にすぎない。ルパート・マードック氏と組んでテレビ朝日株を取得したことがあるソフトバンクの孫正義社長が、「相手がその気になっていないのに買っても無理」と指摘するように、現状はその機運に乏しい。フジテレビの日枝久会長は、「事前に何の連絡もなく、いきなり株をポーンと買って業務提携したい、と言われてもねえ。堀江さんに会うのはやぶさかではないですが、提携する気はまったくありません」と、キッパリ言う。

 もともとニッポン放送株は堀江氏の登場以前から狙われていた。元通産官僚の村上世彰氏が主宰する投資ファンドのM&Aコンサルティングが一時18%を持つ筆頭株主になり、村上氏ら3人を社外取締役に就けることや、持ち株会社をつくることを提案してきた。

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