元タレントの中居正広氏と女性のトラブルで揺れるフジテレビ。27日に「やり直し」記者会見が開かれた。この問題をめぐっては、堀江貴文氏が「フジ・メディア・ホールディングスの株式を買ってみた」とXで発信したことも話題になっている。2005年に「ライブドア」社長だった堀江氏が、フジテレビへの経営関与を狙ってニッポン放送株を取得した「ライブドア騒動」から20年が経過しようとしている。騒動をあらためて振り返ると、フジサンケイグループの全体像が見えてくる(この記事は、AERA2005年2月21日号からの一部抜粋です。肩書、情報はすべて当時のままです)。
◇
プロ野球参入宣言に続いて、今度は大手メディア買収へ。大言壮語かと思われた野望が突如、現実味を帯びてきた。
「個人的な考えですが、あのグループにオピニオンは異色でしょ。芸能やスポーツに強いイメージがあるので、もっと芸能エンタメ系を強化した方がいいですよ」
ニッポン放送株の38%を取得し、筆頭株主に躍り出たライブドアの堀江貴文社長は、アエラの取材に対し、フジサンケイグループの抜本的な「改造計画」を語り始めた。
フジサンケイグループの看板のひとつが、雑誌「正論」に代表されるオピニオン路線だが、堀江氏は、そうした路線にあまりお金はかけたくない、という。
経済とエンタメ重視
「『サンケイスポーツの地位が低く、現場の人たちのフラストレーションが高い』とも聞いています。ボクだったら、夕刊フジ、サンスポ、ボクら世代の愛読誌である扶桑社の週刊誌『SPA!』。そういうのを合わせてエンタメ系の強力な新聞・出版社にしたい」
産経新聞本紙は原点に戻って、日経新聞に対抗しうる経済紙に転換させる。同時に、新たなビジネスモデルを構築するのだという。
「金融・経済情報のニュース配信というビジネスが考えられます。たとえば、ライブドアファイナンスなどボクらの金融部門と組めば、ロイターやブルームバーグに対抗しうる金融サービスを提供できるかもしれません」
新聞・出版部門は、オピニオンより、エンターテインメントやスポーツ、経済情報を重視していく構想だ。そこには、「新聞がワーワーいったり、新しい教科書をつくったりしても、世の中変わりませんよ」という堀江氏特有の冷めたメディア観も背景にある。
音楽業界の再編構想も
ニッポン放送は、フジテレビ株を22%持つのをはじめ、扶桑社や音楽ソフトのポニーキャニオンなどの株も持つ。しかし、株価をもとに算出される時価総額は、ニッポン放送が2570億円なのに、フジテレビは5780億円(2月10日現在)。ニッポン放送株を大量に握れば、フジテレビ株を買うよりも「割安」にグループ企業に影響力を行使できる。堀江氏の狙いも、そこにある。
「ボクらの体力だと、民放大手は考えられない、ニッポン放送じゃないと無理だった。しかも、テレビ、ラジオ、出版まで含めたグループの価値は他のメディアグループより、ずっと魅力的だった」
株式取得直後の記者会見では、インターネットと放送の融合を盛んに強調し、ニッポン放送側に業務提携を呼びかけた堀江氏だが、腹案はそれだけにとどまらない。
冒頭の新聞・出版部門の再編にとどまらず、ポニーキャニオンを軸にした音楽業界の再編構想も持っている。
「ポニーキャニオンを単体で持ってても仕方ない。それを核にして他のレコード会社や音楽出版社をM&A(合併・買収)で増やしていく。それで株式公開したい」
日本のレコード会社は中規模の会社が多く、欧米のようには再編が進んでいない。そのため、ネットによる音楽配信ビジネスでは、権利者の数が多くて調整がつきにくく、結果として米国に大きく出遅れた――。堀江氏にはそんな問題意識がある。