そしてこう続けた。

「マッシュとのシナジー効果で、ウィメンズの強化を図るとともに、バブアーをワックスコートの単一ブランドからライフスタイルブランドへと転換を図るのが、伊藤忠がマッシュと組んだ最大の理由です」

 ライフスタイルブランドへの転換に向けては、通年で使えるファッションアイテムや雑貨類などの販売を今後一層強化していくという。では、具体的なターゲット層はどうイメージしているのか。それはずばり、「20~30代が休日に出かける時に着られる服」だという。代官山に旗艦店を出店した理由の一つも、すぐ近くにある蔦屋書店が入る「代官山T-SITE」に出かける若いカップルが着る服をイメージして店舗展開したという。

 若い層をターゲットにしている理由はこうだ。

「今の40~60代の女性は若い人のファッションに刺激を受け、それを積極的に取り入れていく感覚の人がすごく多い。そうしたマーケットリサーチもあって、まずは『20~30代の女性』の認知を広げ、そこを起点にさらなる拡大を考えています」(嶋越さん)

 嶋越さんはバブアー人気の要因には「外部環境的な追い風」もあると話す。その一つがインバウンドだ。全世界的な人気と円安の恩恵もあり、インバウンドの購入がこのところ目立つという。バブアーのアウターは中国や韓国でも人気で、これらの国でも女性向けに注力している。インバウンドの購入者の男女比率は男性6割に対し、女性が4割と拮抗している。時代の追い風は他にもある。

「スニーカーをはいて通勤する女性が増えたり、ワイドパンツが流行っていたり、ユニセックス化といったキーワードも含め、女性がバブアーを着る環境や相性を良くしていると感じています」(嶋越さん)

伝説の洋品店「MR.BOND」

 とはいえ、若い層と女性に偏ることなく、男性のオールドファンにも気を配っている。代官山の店頭では、既存のバブアーファンから「最近若い子が着だしたから、またクローゼットから出して着るようになった」という声や、「ちょっと最近、若い子に振りすぎてない?」といった声も受けるという。嶋越さんはこう強調する。

「20~30代と女性だけをターゲットにしていると、従来のお客さんが離れてしまいかねない。そこはバランスを意識しています」

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オールドファンの心をつかむ取り組み