富士山の伏流水を求めて、武内さんと長女が静岡県三島市に行った時の写真(武内さん提供)

長女が教えてくれた“発想の転換”

 そんなことがあると私はどうにも心が揺さぶられて、どうしてあんなにひどい言い方するんだろう、とか、なんでもっと優しくできないんだろう? と、すっかり気分が落ち込んでしまいます。

 そうこうしているうちに、次に入ってきたお客さんはお持ち帰りの注文。「お持ち帰り!バターチキンカレーね。ナンで!」と慣れた様子で注文。店員さんは、カタコトの日本語で「カラサハ、ドウシマスカ?」。ふむ。「あー、甘口で。あ、やっぱ辛口!!」

 おっと、またしてもぞんざいな態度の客です。もう少し丁寧に話してあげればいいのになあ……と、私の気分はどん底。思わず、はーっとため息が。と、向かいに座っている長女が私の落ち込みを感じてか、こうつぶやきます。

「ママ~、世の中のすべての人がもう少し相手のことを思いやれたら、ずっと優しい社会になるのにね〜。だって、外国の人がさ、『甘口で! あーやっぱ辛口!』って、そんなアレンジされた難しい日本語を理解するって大変なことじゃない? 偉いよねー」

 やだ、あなたなかなかいいこと言うじゃないの。いろいろ苦労させる割にはナイスに育ってるかも、とちょっとうれしい気持ちになるものの、一度影響を受けた私の心はなかなか浮上せず、ふつふつと湧いてくる怒りを止めることができず。

「いや、もうママあかんわ。怒りが体に満ちてきて止まらないわ」

 とますます落ち込む私。すると娘が、

「ママ、大丈夫だよ。ああいう人はね、ホラー映画でだいたいゾンビに最初に食べられる人だから。ああいう人、みんな大っ嫌いだから」

 へ? ぞ、ぞ、ぞんびに食べられる?? ホラー映画?? あー、いるいる、そういう人、いるねえ。

 いやもうそこから大笑い。それ、すごくいいわ。そうか、ああいう人はゾンビに最初に食べられるかあ。私、ホラー映画は怖くてみられないからその発想はなかったわー(笑)。

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また一つ大きな武器を手に入れた