中日は「守り勝つ野球」で黄金期に
昨年、中日は甲子園での阪神戦で0勝10敗1分と1つも勝てなかった。11試合で計17得点と1試合の平均得点は2得点以下だったが、投手陣も計65失点と1試合平均6点近く奪われていた。打てないとともに、守れないことも大きな敗因だった。
狭いナゴヤ球場からドーム球場に本拠地移転してからを振り返ると、中日が強い時期は「守り勝つ野球」が共通している。
ドーム初年度の97年、前年の2位から最下位に陥落すると、当時の星野仙一監督は長打力重視の野球から機動力、守備力を強化する野球にシフトした。本塁打王の実績もある大豊泰昭、矢野燿大を放出する交換トレードで、阪神から関川浩一、久慈照嘉を獲得。投手陣の補強にも動き、先発要員として武田一浩をFAで獲得し、韓国人投手のサムソン・リー、宣銅烈も加入して強固なブルペン陣を作りあげた。その結果、99年にリーグ優勝を飾った。
落合博満元監督が黄金時代を築いた時も、ディフェンスを重視した野球だった。荒木雅博、井端弘和の鉄壁の二遊間「アライバ」が象徴的だが、強固な守備陣と投手陣でロースコアの展開に持ち込む。落合政権の04年から8年間、すべてのシーズンでAクラスに入り、リーグ優勝4度、07年には日本一に輝いた。当時中日を取材していたスポーツ紙記者はこう語る。
「落合さんはこの球場で勝つためには守り勝つ野球しかないと考えたのでしょう。『点が入らないからつまらない』『退屈な野球』と周りから揶揄する声がありましたが、勝ちに徹する野球は最後までブレなかった。1-2で負けた時も、先発投手に『2点取られたおまえが悪い』って言っていましたから。そんなことを言う監督は落合さんぐらいでしょう。今の中日を見ると、攻守で野球の質が低い。緻密なプレーを大事にしないから余計な失点が多く、好機を作っても得点が入らない。ホームランテラスを設置したりフェンスを低くしたりすれば得点は入りやすくなりますが、その前に野球の質を上げなければ、低迷期から脱することは難しい」
ホームランが野球の華であることは間違いない。得点が入りやすい球場のほうがファンも盛り上がる。だが、ファンが何より求めているのは、強いチームだろう。数年後に球場が狭くなったとしても、低迷が続いているようだとファンに見放されかねない。まずは井上一樹新監督がどのようにチームを立て直すか、注目したい。
(今川秀悟)