こゆきさん(撮影/写真映像部・和仁貢介)

 気性の荒い子どもだった幼少期、周囲となかなか打ち解けられなかった小中学校時代を経て、「今の自分から見れば、なりたい自分にはなれているのかなと思います」と自分を評価するこゆきさん。ぎくしゃくしていた母親との関係性も改善したという。

「一番大きかったのは、上京して1人暮らしを始めたことです。今では『ギフテッドのイベントをやるよ』と母に伝えたら『周りに広げておくね!』と返してくれるような関係性になりました。適切な距離感というのが、親子にもあるんだなと思いますね。今はすごく穏やかに付き合っています。この間も、一緒にカフェに行ったんですよ!」

 SNS上には、ギフテッドの子どもを持つ親のアカウントが多く存在する。「子どもの知能が高いことを自慢しているのか」と想像する人もいるかもしれないが、実際には、子どもが不登校であったり、周囲と不調和を起こしていることへの悩みの発露がはるかに多い。そして、そのなかには、激しい感情の起伏を持っていたり、周囲となじめなかったりする子どもとの接し方に疲労困憊(こんぱい)している親も少なくない。

 時間をかけて、自身を理解し、少しずつ周囲や親と仲良く接することができるように変わったこゆきさんのライフストーリーは、そんな親たちにとってひとつの希望だろう。

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今の自分が知っているよりも社会は広い