高校生の就職が空前の売り手市場だ。今春卒の求人倍率は大学・大学院生の1.75倍(リクルートワークス研究所調べ、2024年)を大きく超える3.91倍(厚生労働省調べ、24年9月末時点)、「令和の金の卵」ともてはやされている。ところが、その就職を支援する体制が、いま、ピンチだという。
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「お給料はいくらもらっていますか?」
高校1、2年の在校生から、3年前に就職した先輩たちに率直な質問が飛んだ。昨年12月中旬、東京都立町田工科高校で開かれた「卒業生の進路活動を聞く会」でのひとコマだ。
「月給は手取りで約26万円。ボーナスは業績がいいと前期と後期でそれぞれ85万円くらいです」
大手精密機器メーカーに就職した男性が答えると、「おー、すげえ」と、生徒たちにどよめきが広がった。初任給や職能等級に大卒者との違いがあると答えた卒業生がいる一方、「学歴による差は全くありません」と話す食品企業に勤める女性もいた。
同校は都立高校としては唯一の総合情報科が設けられ、IT企業に就職する卒業生も増えている。相原那智さん(21)もその一人だ。
「就職に際して、学校からは十分なサポートが受けられたと感じています。7月に求人票が届いてから、志望する企業を決めるまで2週間ほどしかなかったことを除けば、不満はありません」
卒業生の多くは有名企業に
同校の生徒数は男子370人、女子91人。1学年のほぼ半数、75人ほどが就職を志望する。「ここ最近は1300件前後の求人票が届きます」と、昨年度まで進路主任を務めてきた教員・提箸学(さげはし・がく)さん(51)は話す。
求人倍率は約17倍だ。全国の工業高校の求人倍率はさらに高く、20.6倍(23年卒、全国工業高等学校長協会調べ)になるなど、引く手あまたの状態だ。
「卒業生の多くは有名企業や上場企業に入ります」と、提箸さんは生徒や保護者に「就職」を積極的にアピールしてきた。大学で研究者を目指すのであれば別だが、就職するのであれば、「高卒で就職したほうが志望企業に入れる可能性が高い」という。
高校生の就職には「学校推薦」という仕組みがある。企業が選定した特定の高校に求人票が届き、そのなかから生徒が就職先を選び、高校の推薦をもらったうえで就職試験を受ける。
「生徒の約8割は第1志望の会社に就職しています」(提箸さん)
同校では、1年次で生徒に「営業」「製造」といった大まかな方向性を描いてもらい、2年次には「就職フェア」を開催する。
「校内に企業のブースを設けてもらい、生徒が会社の人から直接話を聞けるようにします」(同)
インターンシップの受け入れ企業も募り、生徒を送り出す。