土日返上で深夜まで

 工業高校の就職支援も先細りが進んでいるという。

「どの工業高校でも経験豊富な就職指導の教員は年配者が多い。1970年代前半生まれの第2次ベビーブームへの対応で大量に採用された世代で、退職が一気に進んでいます」

 これまで工業高校の就職指導教員は、生徒の性格や資質を見極めながら就職の相談に乗ってきた。教員は各企業の雰囲気なども考慮しながら生徒とのマッチングを行ってきた。

 マッチング機能が低下すれば、離職率が上がる。企業の信頼も揺らぐだろう。だが、従来の就職ノウハウを次の世代に伝えるのは困難だという。

 工業高校の生徒の就職は、「土日返上で深夜まで働くといった、先生の熱量に支えられてきた」からだ。

 不況で求人が減れば、教員は早朝から地元企業の門に立つ。経営者が出社すると、「社長、うちの生徒をどうぞよろしくお願いします」と、深々と頭を下げる。そんなことが、普通に行われてきた。だが、令和のいまだ。

「そうした慣習を、若手の就職指導の先生が受け継ぐのは難しいと思います」

行政やマスコミの関心は薄い

 古屋さんは高校生への就職支援は、学校単位ではなく、地域ごとに「就職センター」を設けるべきだと提唱してきた。

「たとえば、埼玉県では学校を横断した就職の合同説明会が開かれています」

 ただし、こうした取り組みは、まだごく一部の自治体に限られる。空前の求人倍率の陰で高校生への就職支援は崩壊しつつあるが、行政やマスコミの関心は薄いという。

「みなさん大卒ばかりですから、高卒の就職に目が向かないのかもしれません」

 冒頭で紹介した町田工科高校の卒業生たちの言葉からは、まぶしいくらい働くことへの情熱が伝わってきた。そんな若い世代と企業を結ぶ仕組みは、いつの時代も必要であるのは間違いない。

「高校を卒業して就職するというのは価値ある選択だと思うんです。特に、人生の選択肢が多様化した現代社会においては。働くと、『なぜ勉強が必要か』が身に染みてわかる。若ければ、やり直すこともできるのですから」

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

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