2025年3月、町田工科高校・電気システム系列卒業予定者の内定状況=米倉昭仁撮影

最後は「出陣式」で送り出す

 就職活動が本格化するのは3年次だ。前年度の求人票を生徒に開示して6月中に志望企業を3、4社に絞り込んでもらう。

 高校生への求人申し込みの解禁日、7月1日以降、求人票が届いたら、第1志望の企業を7月中旬までに決定してもらい、成績順に学内で選考を行う。「最終的に校長が学校推薦を出します」(同)

 選考結果を各企業にも伝え、夏休み中に生徒に会社を見学してもらう。同時に履歴書の書き方を指導する。

「夏休みの前半は履歴書指導で終わる、というくらい練習してもらいます。後半からは教員全員で模擬面接です」(同)

 9月上旬、「出陣式」に生徒が集まり、気持ちを高めてから企業を訪れる。応募書類(調査書、履歴書)を生徒が直接届け、受験する旨を伝える。就職試験が始まるのは同月16日だ。

普通科は進学指導で手いっぱい

 提箸さんの目下の悩みは、培ったノウハウをいかに若手の教員に伝えていくかだという。

「特に普通科から転任してきた先生は高校生の就職の仕組みについて、知らない人が多いと感じます」(同)

 今春卒業予定の高校生は全国約94万人。このうち就職希望者は12万8349人で、全体の約13.7%。学科別では普通科4万1632人、工業科4万343人、商業科1万7234人(文部科学省調べ、24年10月末時点)。

「普通科の高校生の就職が最も多いわけですが、工業高校の手厚い就職支援とは大きく異なり、事実上、彼らは放置されている状態です」と、高校生の就職事情に詳しいリクルートワークス研究所の古屋星斗主任研究員は話す。

 就職者全体を見れば、普通科高校の出身者が多いが、学校単位で見ると就職者は非常に少ないことが背景にある。たとえば、都立高校の場合、全日制の普通科は124校にあるが、昨年度、そのすべてで就職者は1桁台だった。

 普通科高校では、ほとんどの生徒が進学を希望するため、教員は進路指導の大半を「進学指導」に割かざるを得ない。特にこの10年は「大学入試の総合型選抜の浸透」によって、その傾向がますます顕著になっているという。進路指導の教員は初夏から秋にかけて、総合型選抜の対策に追われるが、その時期は高校生の就職活動と重なる。

「普通科高校の先生方が『就職指導』に割くエネルギーはなくなってしまうんです」(古屋さん、以下同)

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