堀ちえみさん(撮影・加藤夏子)
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「AERA dot.」に最近掲載された記事のなかで、特に読まれたものを「見逃し配信」としてお届けします(この記事は11月30日に「AERA dot.」に掲載されたものの再配信です。年齢や肩書などは当時のもの)。

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 タレントで歌手の堀ちえみさんは、2019年2月にステージ4の口腔がん(舌がん)と診断された。闘病生活とリハビリを経て20年9月に芸能界に復帰し、今年4月にがんの完治を公表した。友人や芸能界の大切な人たち、ファンに支えられた一方で、SNS上では大量の誹謗中傷を受けて精神的に追い込まれたという。インタビュー中、時折、声を詰まらせて涙を流す場面もあった。誹謗中傷で受けた想像を絶する被害の実態について語ってくれた。

――今年9月、SNS上の誹謗中傷に対する民事訴訟が和解したことを、公式ブログで発表しました

 ブログはファンの方たちと交流できる場所なので大切にしています。実際に口腔がんを公表したときは「絶対大丈夫」「元気になって会おうね」と一つひとつのメッセージが心の支えになりました。でも、「病気は嘘だ、詐病だ、ステージ4の人間が抗がん剤を打たずに済むわけがない」「死ななかったからステージ4は嘘だろ」「こういうしゃべり方を装っているだけで病気でも何でもない」などと、目を疑うような誹謗中傷の文言が書き込まれて。

一人から100件以上の誹謗中傷が書き込まれた

――どんな人たちが何のためにですか?

 警察の捜査によると、ほんのわずかな人間が複数のIDで書き込んだ可能性が高いということでしたので驚きました。こんな分かりやすい部位のがんなのになんで詐病って言われるんだろうって。失ったものがたくさんあるのに、どうやって生きていけばいいんだろうと苦しくなりました。がんになったことを認めているうえで、「しゃべり方が気持ち悪い」「消えろ」というコメントもありました。

――激励のメッセージの方が圧倒的に多いようですが、誹謗中傷のコメントが脳裏に刻まれますよね

 そうなんです。周りの人に「気にしないように」って言われても、人間の尊厳を否定するようなコメントが目に入ってくるので、誹謗中傷の書き込みをする人をなくすことを考えないと、命を絶つ人が出てきます。私も実際に追い詰められました。「まだ生きているのか。しぶとい」「あの時に死んでほしかった」「みんなから嫌われている」とか、毎日50~60件、多いときに100件以上の誹謗中傷が一人の人間から書き込まれたんです。

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デマを流され、殺害予告も