古い友人とは、五十代以降に急接近

 以前、上野千鶴子さんとお話をした際に、結婚したり子どもを産んだりする友人が多くて、気軽に旅をしたり飲みに行ったりする相手が少なくなって寂しい、というようなことを言ったら、上野さんは「私の歳になると子育てが終わり、夫が死んだり離婚したりして、また一緒のステージに戻ってくる」とおっしゃっていました。たしかに、三十代四十代は女の人生が最も多様で幅が広く、友人たちと生活パターンや関心ごとが変わる時期かもしれませんが、六十過ぎたら、十代の学生時代と同じように、似た関心事に戻るのかもしれません。

 とはいえそれまでには結構な時間があり、その間、もともとの飲み仲間や旅行仲間を失うのは寂しいという気持ちはとてもよくわかります。私の場合は、友人グループや高校・大学の同級生で、一人結婚し、二人結婚し、と疎遠な人が増えるたびに、独身同士の絆がものすごく硬く強くなり、それによってまた新しい形の人間関係を楽しめていた気がします。

 たとえば十人で仲がよく、その中では比較的距離の遠かった者同士が、既婚者の増えたグループの中で急接近するということは結構あると思うのです。そんなに親しくなかった高校の同級生と、三十五過ぎて独身同士だったために急に親友のようになったこともあります。

 あとは大人になってできる友人を楽しんでほしいと思います。小中や高校の友人が尊いのは、色々な事情が違う、その後の生きる道も違う者同士が同じ目線でつるんだり話したりできることだとすると、大人になってからの友人は何かしら共通の趣味や仕事を持っていたり、似た境遇にいたり、何か惹かれ合う理由があったりして近づく場合が多い。それは偶然性が強い小学生時代の友人とはまた違う、新しい人間関係です。最近ちょっと離れ気味の古い友人とは、五十代以降にまた急接近することを楽しみに、今は新しい友達を作ることを楽しむのはどうでしょうか。

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