AERA 2024年12月16日号より

「手取りの減少」は年金を受給する高齢世代にも及ぶ。

 深田さんの試算によると、年金収入300万円(企業年金含む)の手取りは、1999年に290万円だったのが2024年には253万円。25年間で37万円マイナスと、減少率は1割を超えている。これについて深田さんは「介護保険や国民健康保険の保険料負担増に加え、老年者控除の廃止など高齢者向けの増税策が主な要因」と指摘している。

家計「苦しい」8割

 働き手の意識を示す、こんな調査結果も出ている。

 エデンレッドジャパン(東京都港区)が今年9月に20~50代のビジネスパーソンを対象に実施した調査によると、家計が「苦しいと感じる」との回答は8割近く。4割以上が「昨年よりさらに苦しい」と感じていることが分かった。お小遣いについては「変わらない」「やや減った」「かなり減った」と回答した人が8割を超えた。99.3%が物価上昇を実感し、84.9%が節約を意識している実態も浮かんだ。

 働き手の苦境はランチ事情にも表れている。

 同調査で、勤務日のランチ代の平均は424円で昨年の400円より24円アップしたものの、勤務日に使えるランチ代については、3人に1人(32.5%)が「減った」「やや減った」と回答。「勤務日にランチを食べないことがある」と回答したのは26.7%で、調査を始めた22年以降、最も高い比率になった。

 ランチ代がアップした背景について同社は「飲食店のランチ代平均はこの2年で705円から929円と200円以上高騰している」と指摘。その上で、賃上げがあってもランチ代の支出を控える傾向や欠食率の高さを重視する。天野総太郎社長は「今年の春闘賃上げ率は、バブル期以来の高水準となり、消費回復や成長につながる好循環への期待が高まりました。しかし、その裏側でビジネスパーソンの約7割が属する中小企業と大企業の格差が顕著になり、日本経済の二極化という課題も浮き彫りになっています」と話す。

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