
輸入量の上限は10万トン
「今、輸入米の需要がハンパないんです。国産米の高騰に外国産米も引っ張られて、入札競争がヒートアップしている。弊社にも『安価な外国産米を入手したい』という問い合わせがたくさんきていますが、思うように買い付けられない。今後も一般消費者向けに流通を継続できるのか、微妙なところです」
根本的な理由は、輸入量が限られていることだ。政府は輸入できる主食用米の上限を10万トンに定めている。今年度の国内の主食用米の生産量は約670万トン。輸入米はその約1.5%にすぎない。
輸入米の入札は基本的に年4回行われる。先月行われた入札では2万5000トンの枠に対して、その3倍を超える7万7094トンの申し込みがあった。
国別でみると、落札数量の6割弱を米国産米(ほぼカルローズ)が占め、1万4462トン。次いで豪州産米の7996トン。ちなみに、台湾産米には2400トンの申し込みがあったが、落札できた数量はゼロだった。

「つゆだく牛丼」と好相性
外国産米の主な需要はレストランなどの外食産業で、「一番身近な例は牛丼店」(商社の担当者)だという。
価格維持のためかと思いきや、味へのこだわりという面も大きいようだ。
牛丼チェーン「吉野家」では、国産米を中心に米国産米をブレンドした米を使っているという(一部店舗では国産米のみ)。その理由を吉野家ホールディングスの担当者はこう話す。
「軟らかく粘りの強い米はごはんとしてはおいしいが、牛丼にすると、たれを吸ってべたついてしまい、いわゆる『たれ通り』が悪い。一方、米国産米は粒立ちがよく、程よい粘りと甘みを併せ持つ」
つまり、牛丼と相性がいいのだ。つゆだくならなおさらだ。
ラーメンチェーン「幸楽苑」は、国産米の白飯を提供しているが、チャーハンにはパラっとした食感に仕上がりやすい米国産米を使っているという。
国産米ではまかないきれない
日本炊飯協会の三橋さんによると、日本人好みの米として作られた米国米だけでなく、最近は他の外国産米も食味のレベルを上げてきているという。
先の商社担当者は言う。
「今後、外国産米の需要はますます高まるはずです。政府は10万トンの輸入枠をもっと広げてほしい」
今年6月、全国米穀販売事業共済協同組合が公開した「コメ流通2040年ビジョン」によると、2040年における米生産者は約30万人で、20年比で65%減。30年代には需要を国産米だけでは賄いきれなくなる可能性があると指摘する。
日本の主食、「米」をどう確保するのか。対策は待ったなしだ。
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

