(3)細かな配慮を忘れない

 忘年会は「楽しい」だけではなく、「心配り」も必要なイベントである。お酒が飲めない人、家庭の事情で遅くまで残れない人など、さまざまな制約を持つメンバーがいることを幹事には意識させたい。たとえば子育て中の女性社員がいる場合、開始時間を早めにするなどの配慮が必要だ。

 また、終電の時間も重要なポイントだ。特に郊外から通勤している人には気を遣わなければならない。コロナ禍以降、終電時刻が早くなった路線も多いため、事前に確認しておくことをアドバイスしよう。

 座席の配置も、幹事として気を配るべきポイントである。上司と部下、男性と女性、先輩と後輩のバランスを考えながら決めていく必要がある。普段あまり話す機会のないメンバー同士が会話できるような工夫も求められる。

 このように細かな配慮を忘れないことが、幹事としての評価を大きく左右する。そして、これらの経験は間違いなく、今後の仕事に活きてくるはずだ。

ダンドリ力は「場数」によって鍛えられる

「ダンドリ力」は、ビジネスパーソンにとって必要不可欠なスキルである。しかし座学で学ぶことは難しい。まさに「場数」がものをいうスキルだ。忘年会の幹事は、その絶好の機会となる。

 実際のプロジェクト運営で「ダンドリが悪い」と評価されたらダメージは大きい。しかし忘年会の幹事であれば失敗経験も糧になる。

 私自身も20代の頃、幹事を任されるたびに気が重くなった。しかし「場数」を踏むことで少しずつ組織全体を俯瞰できるようになるし、普段話さない同僚からも信頼されるようになった。幹事を通じて学んだことは、かなり仕事にも転用できている。

 このように幹事をやることはダンドリ力を鍛えるうえで絶好の機会だ。上司は適度なサポートを心がけながら、若手の成長を温かく見守ってほしい。この経験は必ず、彼らの「仕事力」向上につながるはずだから。

(横山 信弘 : 経営コラムニスト)

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