男性は、自分の想いと向き合うことで、親子関係の改善のきっかけを探っているという。

 親がさらに高齢になった場合、親と子だけのコミュニケーションではつらくなることもある。福岡県に住む教員の女性(61)は、近くに住む80代の両親について、こう話す。

「父が病気になって倒れて以降、母はまるで子どもみたいになってしまい、なにかあったら長男である弟を頼るようになりました。ただ、弟は大阪に住んでいるため、すぐに駆けつけることはできず、父の介護も母を慰めるのも結局、私。献身的に尽くしているにもかかわらず、母は何事も最終判断を弟に一任するので、ムカムカしてしまう」

 そんな苛立ちを抱えきれなくなったとき、女性は「実家に帰るときは娘と孫を同行させる」ことを思いついたという。

「そうでもしないとコミュニケーションが取れないのです。母は孫とひ孫の前では気丈に振る舞うので、そのときに病院やデイケアなど真剣な話をするようにしています」

 前出の柿澤さんは、家族が抱える問題について「『正直、解決は難しいかもしれない』と思うこともあります」と前置きしてから、「それでも、互いに愛を持って接し合うことで、コミュニケーションは大きく改善していきます」と話している。(ライター、編集者・千駄木雄大)

AERA 2024年12月2日号より抜粋

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