「LIVゴルフ」に移った選手たちにとっても、統合には複雑な心境があるはずだ。少ない試合数と高額賞金を条件に移籍したが、これがPGAツアーに統合された際に、維持されるのかは誰にも分からない。未だに解決しない世界ランキングのポイント獲得については、統合により活路を見出すことができるかも知れないが、PGAツアーヘの“出戻り感”は否めず、再び4日間競技をプレーすることには抵抗もありそうだ。
また、統合後もそれぞれが別リーグとして存在し、プロたちが所属するリーグでプレーすることになると、今度はPGAツアー側のプロたちが不公平感を持つだろう。「LIVゴルフ」とPGAツアーの賞金額が似たものとなっている現状では、PGAツアーでプレーする負担が「LIVゴルフ」より大きくなるからだ。
そんな中で統合の道が一気に進むのは、「LIVゴルフ」への資金援助が途絶えるときだろう。「LIVゴルフ」は米国での人気獲得に苦戦しており、特にアジア市場への進出を目指している様子。日本や韓国、そして徐々にゴルフ人気が高まっている東南アジアなどでプレゼンスを高めることができれば、収益を得ることもできるだろうが、これが不調な場合は、ファンドが支援を止める可能性がある。
いくら巨額な資金を抱える「PIF」でも、「LIVゴルフ」がファン獲得や視聴率アップを今後も見込めないとなれば、今までのような高額な移籍金でスターを引き抜き、高額賞金を維持していくことは難しいだろう。こうなると、両者の統合というよりはPGAツアーによる「LIVゴルフ」の“吸収”という方が表現としては正しくなるのかも知れない。
ファンにとって一番避けて欲しいのは、両者がこのまま別の道を歩み続けることだろう。世界のトッププロたちが別のツアーでプレーしたままでは、今後もスターが同じ舞台で競うことがメジャーだけになる。そして、時が経てば、新たな規定が生まれない限り「LIVゴルフ」所属の選手は歴代メジャー覇者などしかメジャーでプレーできない可能性もある。とにかくゴルフファンとしては、1日も早い両者の歩み寄りと解決を期待したいところだ。