今こそ日本の防衛政策を根本から議論すべき

 これまでの路線を変更することなど全く考えないまま、予算編成が今も進んでいて、表向きには12月下旬に決まることになっている来年度予算案の内容は、実は、官僚主導で12月上旬には、ほぼ決まってしまう。そして、一度それが来年度予算として成立してしまえば、既成事実となり、来春以降に大幅な見直しをしようとしても、石破政権になってからの最初の予算で認めてしまったものを否定することは難しく、事実上路線変更ができなくなる。官僚たちは、それを狙って、自分たちと族議員にとって都合の良い政策を予算に盛り込んでいるのだ。

 2023年8月22日配信の本コラム「台湾有事を起こすのは平和主義を捨てた日本だ 麻生氏『戦う覚悟」発言にみえる大きな勘違い』で紹介したとおり、海外のメディアや専門家は、日本の外交安全保障政策が「平和主義を捨てて軍拡路線に転じる」と評価しているが、今のように国民の無関心が続けば、安倍政権が敷いた戦争路線の上を漫然と進み続けることになり、引き返せないということに気づいた時には、もう手遅れということになりかねない。

「そういえば、与野党逆転したあの時に、どうして日本の防衛政策を根本から見直すという議論をしておかなかったのか」と後悔しても後の祭りということになるだろう。

 米大統領選の結果を見て、「アメリカは酷いことになったね。アメリカ人は何を考えているのだろう」などと言っている日本人は、能天気でおめでたい人たちだ。

 さらに、私がこうした懸念を強める要因として挙げておきたいのが、野党第1党である立憲民主党の代表が野田佳彦元首相であるということだ。なぜなら、野田氏は、米国から「アメリカのポチ」だと評価される政治家だからだ。

 今月6日付の日経新聞朝刊にそれを示す非常にわかりやすい記事があった。

 米ジョンズ・ホプキンス大ライシャワー東アジア研究センター長のケント・カルダー氏のインタビュー記事だが、その中でこんな発言があった。

「日本が安全保障法制で集団的自衛権の行使容認を打ち出したことは米国にとって極めて重要だ。……仮に立憲民主党など野党が破棄を強く主張すれば深刻な問題になる」

「(日本)政府は既存の合意を明確に拒絶するべきではない。集団的自衛権を拒む政策を打ち出したり、米軍普天間基地の辺野古移設を取り消したりすれば摩擦を生む」

「……日本の二大政党の間で大連立が実現することも考え得る。政治が安定し、米国の観点からもポジティブな結果をもたらすかもしれない」

「立民代表の野田佳彦元首相は米国で高い評価を受けていた。09年に発足した民主党政権は初期に比べて後半は現実的になった。……野田氏が率いる立民に対しても楽観視している」

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日本の平和主義が空洞化している