ただ、その一方で、

「睡眠時間が長い人も認知症のリスクが高いという指摘もあるんです」

 とも話す。どういうことだろうか。

 東北大が宮城県大崎市の65歳以上の高齢者7422人を対象に、平均5.7年の経過観察で睡眠時間と認知症発症について調査した結果によると、

「睡眠時間が1時間、2時間と増えた人ほど発症リスクが高まったことがわかりました」

 と宮崎さん。

 睡眠時間が増えたことでリスクが上がった別の調査結果もある。

「認知症でなかった男女1517人を最長10年間追跡調査を行った『久山町研究』によれば、睡眠時間が5時間未満の人は認知症リスクが2.64倍、死亡リスクが2.29倍に、10時間以上の人はそれぞれ2.23倍、1.67倍に上昇していることが明らかになったのです」(同)

 睡眠不足だけでなく、「寝すぎもよくない」とは意外に感じる人も多いだろう。

 認知症予防には、睡眠不足も、睡眠のとりすぎも避けたほうがいい。問題は睡眠の「質」なのだ。

 そこで、改めて見直したいのが睡眠の基本中の基本。

「朝日を浴びて体内時計をリセットし、メリハリをつけた睡眠リズムを確保することが大事です」と宮崎さんも強調する。まさに睡眠の基本だが、「なかなか朝日を浴びに散歩に行けなくて」という人もいるだろう。

「カーテンを10センチほど開けて寝るだけでいいんです」(同)

 自然光で目覚めることが望ましく、室内やテラスに出て浴びる光でも十分という。

 朝日を浴びた14~15時間後にメラトニンが分泌され眠くなる。起床後に日光を浴びると、その分泌が止まり日中に覚醒して活動が始まる。高齢者にとって日光浴が大切なのは、睡眠のリズムを整えるだけでなく、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の予防にもつながるビタミンDの生成にも有効だからだ。

「朝食はたんぱく質、ビタミン、脂質、炭水化物をバランスよくとることが大切です。私はいつも患者さんに『朝ごはん、4品食べましたか?』と言っています。そして日中は適度な運動をする。非常に基本的なことですが、これが体内時計を動かす3大要素」(同)

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