■遅寝早起きで安定する睡眠
とはいえ高齢者の多くが、寝床に入ってもなかなか眠れず、寝ても(トイレなどで)途中で起きてしまう。朝起きてそのまま眠れない。こうした3大お悩み「入眠障害」「中途覚醒」「早朝覚醒」が、良質な睡眠を遠ざけてしまう。
理解しておくべきことは「年齢を重ねれば睡眠時間は減る」ということだ。若い頃のように長時間続けてぐっすり眠ることを求めないほうがいい。
「必要な睡眠時間は、年齢や体質、季節によっても変わります。一般的には10代で8~10時間、成人以降50代までは6.5~7.5時間程度、60代以降は6時間程度で十分と言われています。春から夏は睡眠時間が少し短くなり、秋から冬にかけては少し長めになります」(同)
宮崎さんはこう指摘する。
「日中に眠気がなく、朝に疲れを感じなければ(その睡眠時間で)大丈夫。睡眠時間は人それぞれ違って当たり前なんです。理想的といわれる睡眠時間にこだわらないこと。ただ、前にも述べましたが、眠りすぎはよくない。活動量も少なくなりますし」
宮崎さんが勧めるのは、「睡眠制限療法」だ。薬を使わない不眠症治療のひとつで、中途覚醒が多く、睡眠が浅い人に対し、遅寝早起きをさせて寝床で過ごす時間を適正化する。これにより、睡眠が安定すると言われている。
「起きる時間を変えずに、眠くなってから寝床に入る。手先を動かすなど能動的な活動を適度に行い、脳も使ってほどよく疲れた感じで布団に入るのが理想です。すると深い睡眠につながります。私のところに相談にみえる患者さんにも『寝床に入るのを遅くしたらゆっくり眠れるようになった』という例があります。写真の整理をしたり、人形に着せる服を縫ったり。あとはテレビよりラジオです。ラジオを聞きながら手先を動かして何かをするといいですね。寝すぎによる認知症リスクの回避にもつながります」
そしてこう続ける。
「睡眠外来をしている近江草津徳洲会病院にも70~80代で『眠れない』と悩まれる患者さんが多くいらっしゃいます。睡眠薬を飲むことに罪悪感を覚えている方もいます。ある女性(78歳)に『毎日飲んでもいいですよ』と言うと、逆に安心したのか、やめたんです。睡眠制限療法にして飲まなくても眠れるようになったそうです。『楽しみが増えたのでついつい遅くなってしまって、あっという間に眠れるようになった』って。『眠れない』と悩まず、高齢者こそ夜更かしをしてほしいですね。70歳以上の人がどうすれば楽しみながら起きていられるか。そちらが大切になってきますね」