極端に遅い時間まで起きている必要はないが、適度な夜更かしなら試してみてはどうだろう。
ただ昼寝については注意が必要だ。
「昼寝をすれば、その後のパフォーマンスは上がります。ただあくまでも30分以内にとどめましょう。30分以内の昼寝の習慣がある人は、ない人に比べて認知症の発症率が6分の1になるという研究結果が報告されています。ただ1時間以上の昼寝を習慣化していると、今度は認知症のリスクが2倍になるそうなので気をつけましょう」(同)
■食事のとり方も快眠には重要
最後に日本眠育普及協会代表理事で、睡眠改善インストラクターの橋爪あきさんに聞いた。
橋爪さんは10代の頃から40年近く睡眠障害に悩み、ストレス性胃炎、胃潰瘍(かいよう)、過敏性腸症候群に苦しんできた。その体験を経て、現在は睡眠に関する知識を講演や書籍などを通して発信している。
橋爪さんは、快眠には食事も重要だと言う。
「食事も規則正しく。朝食は起きて1時間以内に食べ、夕食は眠る3時間ぐらい前までに済ませます。夜遅い食事は体内時計が狂うだけでなく、肥満を招いたり、腸内細菌のバランスが崩れたりします。栄養は、特に良質のたんぱく質やビタミンB群の摂取を忘れないようにします」
安眠につながる環境づくりについては、
「陽光が十分に差し込み、通気がよく湿気もこもらない部屋にすること。健康によい建材だと理想的です」
とのこと。寝具や寝間着も心地よいものを。
「敷物、掛け物と夜着は、いずれも通気や放湿もよく、冬は保温、夏は放熱に優れたものを選びます。マットレスや布団などは、寝返りと体圧分散のためにもやや硬めのほうがいいです。枕は高すぎるとよくないので、バスタオルの即席枕が便利です。1枚ずつ外したり、足したりして、高さ調整ができます」
そしてこう補足する。
「睡眠を大切に考えて、睡眠不足を起こさないよう、周囲の人も一緒に気を使ってほしいですね」
橋爪さんの「安眠七つの秘訣(ひけつ)」も下で紹介しているので、ぜひ参考にしていただきたい。
【安眠七つの秘訣】
一、体は時計仕掛け、規則正しい早寝早起き
二、肝心なのは、朝日の力
三、日中明るく、夜は暗めの環境で
四、昼は活発、よく遊び、よく動け
五、夜は、まったり、こころも静かに
六、体冷やさず、ごはんは楽しく
七、明日の自分は眠りがつくる
日頃から適度な運動をして、食事もバランスよく。眠れない時は眠れないことにとらわれないように。そういう生活を自然にしていくことが、生活習慣病や認知症予防につながりそうだ。あまり考えすぎずに、ゆっくりいこう。(大崎百紀)
※週刊朝日 2023年4月21日号