執ように近づき、襲ってくる場合は鉈を使用する。無抵抗だと最悪の場合、殺されてしまう。
昔からクマの生息域で暮らしてきたアイヌは屋外に出る際、「タシロ」と呼ばれる鉈と、「マキリ」という小刀を腰の左右に身につけ、クマから身を守ってきた。
「ヒグマは人を襲う際、抱きついて頭をかじったり、爪で引っかいたりして攻撃します。抱きつかれた状態でもどちらかの手が使えれば、タシロかマキリを抜いて、突き刺せます。クマに痛みを感じさせることで攻撃を止めることができることをアイヌは経験的に知っていたんです」
死んだふりは通用しない
門崎さんは、大千軒岳でクマと遭遇した消防士たちの対応が、非常によかったと評価する。
「登山中、ホイッスルを吹きながら歩いていましたし、クマに襲われたときには山菜採り用のナイフで反撃した。それによって、クマは攻撃するのを止めて、逃げたわけです」
ちなみにアイヌには「死んだふりをすれば難を逃れられる」という口承はないという。
クマは人を襲うこともある猛獣である。それをきちんと認識したうえで、豊かな北海道の自然を味わってほしい、門崎さんは言う。
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)