分け隔てなく接する大谷スタイル
大谷とメディアの関係にはルールがある。試合前、試合後に1対1で話しかける「ぶら下がり取材」は禁じられており、独自のネタをつかむのが難しい状況にある。自宅取材をしたテレビ局は、プライベートの大谷を知りたいという視聴者の思いに応えようという考えがあったかもしれないが、生活に支障を掛けるような報道は慎むべきだっただろう。
大谷がフジテレビのインタビューを受けなかったことが大きく取り上げられたが、現地で大谷を取材する通信社の記者は「彼がマスコミ嫌いと報じるメディアがあるが、それは違います」と語気を強める。
「大谷は米国、日本のメディアに分け隔てなく接する。誤解されないようにコメントに気を遣っているように感じるけど、こちらが聞きたいことをわざとはぐらかしてニヤッと笑ったり、おちゃめなところがある。気取った感じがなく、物腰は柔らかいですよ」
日本ハム時代から大谷を知るフリーライターも、「メディアとの関係が絶妙なんです。スーパースターになると、自分の気に入った記者にしか情報を流さない選手がいますが、大谷は違う。取材歴が長くても短くても同じスタンスで接する。こういう選手は非常に珍しい。大谷を何年も取材している記者でも、グラウンドを離れて会食に出掛けたという話を聞いたことがない。オンとオフをきっちり線引きしているということでしょう」
番記者と食事会をした松井秀喜氏
選手が記者と親しくなることは、決して悪いことではない。現役時代に巨人、ヤンキースで活躍した松井秀喜氏は試合後に、番記者たちと食事に行くことで知られていた。当時の巨人担当記者が振り返る。
「松井さんは記者を大事にしてくれて、番記者を集めて食事会をしたりしました。取材歴が浅い記者に対しても気を配っていた姿が印象的で、その記者は『松井さんって本当に凄い』と感激していました。悪口や陰口を一切言わないし、打撃不振の時に手厳しいことを書かれても『それが仕事だからね』と理解を示していた」