米大リーグ史上初の「50本塁打、50盗塁」やワールドシリーズ制覇など今季まさに頂点を極めた大谷翔平選手(photo:Getty Images)
この記事の写真をすべて見る

 ワールドシリーズ優勝を果たし、頂点を極めた大谷翔平選手。成績以上にその存在自体が大きな意味を持った。大谷選手の2024年の活躍を一冊に詰め込んだAERA増刊「大谷翔平2024完全版 ワールドシリーズ頂点への軌跡」(朝日新聞出版)より。

【写真】サヨナラ満塁本塁打を放って手洗い祝福を受ける大谷翔平

*  *  *

 ワールドチャンピオンのシャンパンファイトは格別だ。ドジャースの大谷翔平がムーキー・ベッツ、フレディ・フリーマンや仲間たちと喜びを爆発させた。 

 4勝1敗でヤンキースを制したワールドシリーズ。第5戦は敵地・ニューヨークで5点のビハインドを追いかける展開だったが、7―6で逆転勝利。劣勢をはね返す試合運びが地力の強さを物語っていた。

 現地で取材するスポーツ紙記者はこう振り返る。

「前回、2020年にドジャースがワールドチャンピオンに輝いた時は、コロナ禍でレギュラーシーズンが60試合と大幅に短縮されました。選手たちの中で真のチャンピオンという意識は薄かったと思います。今年はメジャー最高勝率(6割5厘)で12年連続ポストシーズン進出を決め、東の名門・ヤンキースをワールドシリーズで撃破した。フルシーズンを戦っての世界一は1988年以来36年ぶりで、球団の歴史に残る年になりました。もちろん、その中心で活躍したのが大谷です。彼の貢献度は計り知れない」

 昨秋に右ひじの手術を受けたため、打者に専念した今季は打率3割1分、54本塁打、130打点、59盗塁をマーク。本塁打、打点の2冠王に輝き、メジャー史上初の「50本塁打、50盗塁」を達成した。そして、エンゼルスでは6年間立てなかったポストシーズンの舞台でも、満身創痍の状態でグラウンドに立って闘い続けた。

8月23日、サヨナラ満塁本塁打を放って「40-40」を達成すると、大谷は試合後のインタビュー中に手洗い祝福を受ける(photo:アフロ)

 世界一への歩みを振り返ると、地区シリーズ・パドレス戦の第1戦で二回に右翼へ同点3ランを放った一撃が印象深い。先発の山本由伸が初回に3点を失う苦しい展開だったが、大谷の一発が試合の流れを変える形になり7―5で逆転勝利を飾った。ドジャースは22年から2年連続地区シリーズで敗退している。第1戦で負けていたら、パドレスの勢いにのみこまれていたかもしれない。チームが息を吹き返す起爆剤になった大谷の一発は大きな価値があった。メッツとのリーグ優勝決定シリーズでは17出塁を記録。チームメートのマックス・マンシーと共にポストシーズン同一シリーズの球団最多記録を樹立した。

次のページ
ワールドシリーズでは全試合で出塁