「毎朝目覚めると、また一日が始まるのか……と絶望的な気分になります。母の寝ていた部屋でベッドを眺めながら、何もできずにただ時間だけが過ぎていくんです。母のいない一日をどう過ごしていいのかわからない。生きていることがとてもつらいんです。本当に情けないです」
大切な人を亡くしたあと、遺された人は、亡き人が物理的には存在しない人生の時間を過ごすことになります。この60代の女性のように、母のいない時間をどのように過ごせばいいのかわからず、途方に暮れる人もいます。
一日をとてつもなく長く感じるときもあれば、何もできないまま気がつくと一日が終わってしまうこともあります。
人によっては、あたかも時間が止まってしまったかのように感じるでしょう。
あるいは自分には世界が一変するほどの出来事が起こったにもかかわらず、現実の世界が何ごともなかったかのように動いていることに戸惑う人もいます。
取り残された気持ちに
夫を肝硬変で亡くした40代の女性は、「周囲の人は自転車で走っているのに、私は道の真ん中にひとり取り残されたように感じて、どうしていいかわからなかった」と話されていました。
いつもと変わらぬ社会の時間の流れのなかで、自分だけが置いてきぼりになっているように感じられるのです。
このような状態に陥ることは、けっして特別なことではなく、大切な人と死別したあとにみられる自然な反応であり、だれもが経験する可能性があります。
もし自分がこのような状態になったときには、早く元気にならなければとあせる必要はありません。
何より大切なことは、あなたが生きていることです。
今はまだ、何もできなくてもいい、とにかく生きていればいいのです。