人生100年時代。自分の人生設計を折に触れて見直すのが大事だ(写真:iStock / Getty Images Plus)
この記事の写真をすべて見る

「人生100年時代」という言葉が流行してからはや7年。「老後資金は足りる?」「何歳まで働けば?」と不安や焦りはつきものだが、変化への一歩を踏み出すにはどうすればよいか。識者に聞いた。AERA 2024年11月4日号より。

【図表を見る】「金融庁の『ライフプランシミュレーター』で家計収支をシミュレーションしてくれる」はこちら

フォトギャラリーで全ての写真を見る

*  *  *

 ある90歳の女性は先日、長年勤めた企業の社長を退任。直後に始めた再就職活動中、面接でばったり出会ったのは、やはり就活中の孫だった。結局どちらも採用され、孫と祖母は、同僚として働くことに──。

 こちら、健康寿命が120歳まで延びた、数十年後の世界を描いたフィクションだ。とはいえ書かれていたのは、ワシントン大学医学部の今井眞一郎教授の2021年の著書『開かれたパンドラの箱 老化・寿命研究の最前線』。専門家が考えた真実味のある未来に、多くの人々が衝撃を受けた。

 とくに中高年世代には、寝耳に水の健康寿命の延長予想だった。学び、働き、家庭を作り、最後は悠々自適の老後を過ごしてから人生の幕を下ろす。そんな昭和の時代から目の前に敷かれたレールの上を歩いていたはずなのに、最後の「悠々自適」の部分が一気に倍増する計算だ。

 しかも「人生100年時代」の衝撃も冷めやらぬまま、「120年時代」へとまさかの大幅延長。「それでなくても2千万円は必要と言われている老後の資金は?」「この先AIと戦いながら60年も働くなんて……うそだと言って」などなど、自分のまわりにいる多くの中高年世代を、混乱の渦に巻き込むことになった。

定年再雇用はイヤ

「人生100年時代」というワードがユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされたのは、2017年のことだ。このワードの提唱者は、『LIFE SHIFT』の共著者で、イギリスの組織論学者であるリンダ・グラットンさん。教育→仕事→引退という三つのステージからなる従来の“人生”から脱却して、さまざまなステージを自由に行き来しながら生涯現役であり続けることを提案している。

『LIFE SHIFT』が日本で発刊されてすでに8年、バンバン転職したり、ガンガン学び直したり。知ってか知らずか、長くなりそうな人生の準備をすでに始めているように見える若い世代に対して、いまだにパラダイムシフトの混乱から抜け出せていないのが中高年世代だ。

次のページ
定年再雇用は「古巣にしがみついているようで」気が進まない