人生の枠組みが変化

 そのひとつが、「変身資産アセスメント」と呼ばれるテストのようなツールだ。書籍『LIFE SHIFT』でも人生100年時代は、三つの無形資産が重要になると指摘されている。「生産性資産」「活力資産」、そして「変身資産」だ。

 人生のフレームワークが変化し、長くなっていくこれからの時代は、自身を変えなくてはいけない場面に数多く出合うことになるという。

 そうして変わろうとするときに、その変化を前に進めるアクセルと押しとどめてしまうブレーキは、誰のなかにもあるもの。

「人生に変化を起こしていく心のアクセル10項目と、変化を止めてしまう心のブレーキ10項目を200問の質問で見える化することで、自身がもつ変身資産を知る。そしてこれからの100年ライフを旅するための勇気と知恵につなげていくアセスメントですね」(大野さん)

 例えば「心のブレーキ」にあたるのは、もう年だからと思い込んで、ライフシフトの旅の可能性を奪ってしまう「年齢バイアス」や、何か新しいことを始めるにあたって、地位、名誉など、何かを手放すことに踏み切れない「ノットリリース」のほか、「失敗する恐怖」「対立からの逃避」「集団への同調」など10項目が挙げられている。

「こうして自分では気がつかないことも多い変化への考え方を確認しながら、ワクワクするような将来の自分の姿をイメージしてもらう。妄想でもいいんです。これがライフシフトへの旅の、最初の一歩となりますね」(大野さん)

 自分も、ワクワクするような将来を妄想してみた。死ぬまでに一度はやってみたいと思っていたことを、せっかく延びた人生を利用してやってみるのも手かもしれない。ちなみに自分の場合は、繁盛ラーメン店の店主か、主役級の俳優だけど。

「これまで出会ったライフシフターだなと思う人たちに共通することというのは、やっぱりまずとにかくやってみる人ということです。ただ思い悩んでいるだけじゃなくて、小さなステップでもやってみる。行動をしてみるということが、ライフシフトにはやっぱりすごく大切なんですよね」

(ライター・福光恵)

AERA 2024年11月4日号より抜粋