作品撮影のため公園に。帽子とチェックのシャツは今の仕事を始めてから着用。リトのトレードマークだ(写真/小黒冴夏)
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 葉っぱ切り絵アーティスト、リト。リトは自分のADHDの特性を生かし、葉っぱ切り絵アーティストとして活動。会社員時代は仕事ができず、悩みに悩んだ。もう「すみません」は言いたくない。「ありがとう」と言われる仕事をしよう。試行錯誤の末、アーティストの道へ。今では福島に個人美術館ができ、海外にもファンが増えた。動物が織りなす優しい世界は、リトからのメッセージが込められる。

【写真】道具はデザインナイフだけ。イメージが決まったら下書き

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 葉っぱ切り絵アーティスト・リト(38)は、机に長辺が約10センチの葉っぱを置くと、カエルが里芋の葉を傘代わりにして立つ姿を切り始めた。使うのはデザインナイフ一本。垂直に立て葉っぱを回しながら切っていく。カエルの目は1ミリもない穴で表現する。手を止めて見せてもらうと、「少しぎざぎざしてるのでもっと整えないと」と言うが、目をこらしてもきれいな穴に見える。

 この精緻な技術で作られた切り絵を、2020年から毎日のようにSNSに投稿してきた。真夏に扇風機の前で口をあけて涼むライオン、「レジ袋はいらないです」と言うメスのカンガルー、涙を流すウサギに「いつでも君のそばにいるよ」と寄り添う森のクマやハリネズミ、カエル、イモムシ……。そんな動物たちが織りなす物語にほっこりしたり、にっこりしたり、ぐっときたり。

 現在、X(旧ツイッター)とインスタグラムと合わせてフォロワーは約78万人だが、まだ1万人前後だった20年夏、インスタでいち早くこの才能を見つけたのは、当時百貨店・博多阪急でリビングフロア・工芸・アート担当をしており、現在は丹青社B-OWND室の加藤大貴(37)。1枚の葉っぱの中に物語があり、“心温まるな”と思った。コロナ禍で社会が殺伐とする中、この切り絵に描かれた物語は人を笑顔にし幸せにする力があると、翌年の正月、展覧会を企画した。

 ほぼ無名のリトだったが、初日は大雪にもかかわらず客足は途絶えず、なかには来る日も来る日も会場を訪れ、作品の前に佇み、涙を流す女性もいたという。「つらい時に慰めてもらった」と。

「この展覧会で初めてリトさんのことを知った人も泣いていました。そういうアーティストは、作品に宿る力がものすごく強いんです」(加藤)

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仕事がうまくこなせず 毎晩ゲームセンター通い