横浜市立野毛山動物園でコラボ企画開催中に訪れた。園長の田村も葉っぱアートを作るので、リトの切り絵は2020年からフォロー。「レッサーパンダはこの動物園に来た時に作ろうと思った」とリト(写真/小黒冴夏)

 もし転職してもこれまでと同じことになるだろう。ならばと18年10月、会社をやめサラリーマン生活に別れを告げる決断をした。では自分は一体何がしたいのか──生まれて初めて自分と向き合った。不安はあったが、自ら進む道を決められる「自由」を手に入れられた解放感も大きかった。

 大前提として決めたことがある。それは今後「すみません」と言わないこと。一生分の「すみません」を口にしてきたからだ。その代わり「ありがとう」と言われる仕事につきたいと考えた。

 具体的に職業を考える前に、カードゲームで「手札」を確認するように、自分の“武器”を書き出した。とくに一つのことに集中しすぎる「過集中」は、並外れた集中力として生かす道があるはずだ。そんな特性をどう生かすかを試行錯誤していたある時、紙に落書きしていたものを眺めて「アートのようなものができるんじゃないか」と思った。

 見えてきた職業が「アーティスト」。険しい道になることはわかっていた。だから2年間死にものぐるいで頑張り、駄目だったら障がい者関係の仕事などを見つけると両親に言っていた。

 19年2月、怪獣やカニなどを超精細にボールペンで描いたり、スクラッチアートや粘土に絵付けをしたりしてSNSに投稿した。最初は反響もあったが次第に反応は鈍くなった。

「失業手当も底をついてきて怪獣フィギュアを泣く泣く2体売りましたね。親と同居していたので家にお金を入れたかったし」

 レシートを使った切り絵に挑戦し始めて間もない20年1月、ネットで見た作品に衝撃を受けた。1枚の葉っぱに2頭のシカが森で佇(たたず)む様子が切り絵で描かれていたのだ。スペインのアーティスト、ロレンツォ・デュランの作品。小さい葉に世界観、物語が凝縮されていることに感動し、すぐさま公園に行き、葉っぱをみつけて作り始めた。

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