華子さまは、旧陸奥弘前藩主の津軽家の出身。若いころから、ごく自然に和装をお召しだ。15年の春の園遊会では、羽ばたくカワセミを描いた訪問着が印象的だった。
そして23年の春の園遊会では、草花と野鳥を描き出した訪問着に、裏雲取りの菱格子柄を配した帯の取り合わせ。
「ひときわ目を引くのが、墨黒色と金の帯。こちらは本当によいお品です。華子さまのお着物はいずれも素晴らしいが、なかでも帯はぜひ皆さまにも見ていただきたい」
と、泰三さんは話す。
さらに印象的だったのは、03年の秋の園遊会でお召しだった、みずみずしい穂先を垂れる稲穂が見事に織り出された袋帯。国民の豊かな生活を祈り願う皇室が、豊穣をたたえる稲穂の帯を選ぶのは、人びとへのメッセージのようにも感じる。
そして美しい赤茶色の訪問着にも、波文様や地面に見立てた金箔に生える松の意匠が描き出されていた。
さらに泰三さんは、寛仁親王妃の信子さまも推す。
15年の春の園遊会では、染め出すのが難しいと言われる海老茶色の訪問着に、金と銀の若松が美しく大胆にあしらわれていた。
泰三さんが注目したのは、帯からのぞく組紐につながる翡翠のような玉飾り。
「おそらく懐中時計ではないでしょうか。着物の袖から時計がのぞくのは、美しくありません。和装小物として、帯に懐中時計を挟んだものです。宮妃は、皇后さまやかつての皇太子妃といった内廷皇族よりは、すこし自由なお立場のためか、帯留めや指輪を身に着ける方も多いですね」