秋のG1シーズンも始まり、いよいよ競馬が盛り上がる季節が来た矢先にJRAを代表する女性ジョッキーである藤田菜七子騎手が、スマートフォンの不適切使用による騎乗停止処分を機に電撃引退するという驚愕のニュースが飛び込んできた。
JRAによると藤田騎手は2023年4月頃まで、JRAが禁止しているレース開催中の調整ルーム居室内にスマートフォンを持ち込んで通信を複数回行ったとのこと。当時の聞き取り調査の際には外部とのやり取りは否定したため口頭での厳重注意にとどまっていたが、外部報道によりそれが虚偽申告だったのが判明したことを重視し、処分が相当だと判断したという。
この件に関しては藤田側から二重処分であるとの主張があったり、規則違反は規則違反だとして今回の処分は妥当だという世間の声もあったり、そもそも現代においてスマホ使用禁止は現実にそぐわないという意見も出るなど、すでに各所で論じられている。そのため本稿ではその是非には触れず、さまざまな騎乗停止例を紹介しようと思う。
【海外競馬での携帯電話トラブル】
これもすでに今回の件で広く知られるようになったが、そもそも海外にはJRAのような前日夜から入室を義務付けられ、入室後は携帯電話など通信機器の使用も制限される「調整ルーム」なるシステムは存在しない。
10年以上前には現在ではオーストラリアを代表するジョッキーの1人となったブレイク・シン騎手がジョッキールーム(宿泊施設でもある日本の調整ルームとは違い、レース当日に自分の鞍や道具を置くスペース)で使用禁止の携帯電話を使って恋人と通話していたことが発覚して15カ月の騎乗停止処分となったが、これは恋人だったキャシー・オハラ騎手の騎乗馬に賭けて馬券を的中させたこと、親族を通じて自らが騎乗したレースの馬券を購入していたことも重い処分の理由だった。
【欧米では厳しい鞭の使用制限】
日本と海外でルールに大きな違いがあるのは鞭の使用制限だろう。日本は制限が緩く、連続で5回までの制限を守れば(つまり5回叩いてインターバルを置き、さらに5回叩くという使い方をすれば)レース全体で10回や20回叩こうがそれ自体による罰則はない。ただし明らかに脚色のなくなった馬に対してや、レースの大勢がほぼ決した後の過度の鞭使用はNGだ。