硬派な報道番組から、サンジャポ(TBS)まで無色透明な存在感で、場に溶け込んでいく。テレビ映えする長身で細身。ZARAのスーツをさらりと着こなす(撮影/倉田貴志)
硬派な報道番組から、サンジャポ(TBS)まで無色透明な存在感で、場に溶け込んでいく。テレビ映えする長身で細身。ZARAのスーツをさらりと着こなす(撮影/倉田貴志)

■#鈴木エイトを出せ 語れるのは自分しかいない

 とはいえ、事件発生直後の鈴木の周辺は静かなものだったという。

 事件があった日、鈴木は家族と週末ステイを楽しもうと、以前から予約していた都心のホテルにチェックインしていた。銃撃事件を伝えるニュースに愕然(がくぜん)とする中、奈良西警察署に詰めていた知り合いの記者から、銃撃犯の母親が入信していた宗教が旧統一教会だと連絡があった。

「反射的にこれは大変なことになるな、と。自分も渦に巻き込まれていくと思いました」

 と振り返る。それは、政治家と旧統一教会の関係を誰よりも深く知っているという自負があったからに他ならない。教団との関係追及の本丸だった安倍が亡くなり、自棄になりそうだった気分はあっという間に吹っ飛んでいったという。

 だが、テレビ番組などからのオファーは一向にこない。鈴木と長い付き合いのあるノンフィクション作家の菅野完は言う。

「事件直後のテレビの解説と論調は酷(ひど)いものでした。合同結婚式や霊感商法の話題も1990年代の認識で止まったまま。政治との関係には一切踏み込まず、中には『個人的な恨みを買ってしまっただけ』と矮小化する人まで現れる始末。鈴木エイトに語らせなきゃダメだと、知り合いのディレクターらに片っ端から連絡を入れた」

 そんな菅野の後押しも受け、事件から4日後の7月12日、鈴木は自らのツイッターに「#鈴木エイトを出せ」というハッシュタグをつけ、こう書き込んだ。

「皆さんにお願いです。統一教会と安倍晋三元首相のズブズブの関係を明確な論拠で語ることができるのは私以外にいません。私のアカウントをフォローし、ツイートをリツイートしてください」

 プロフィール欄には携帯番号をそのまま載せ、どんな電話にも出た。

「このままでは、旧統一教会の被害者が救われない。政治家との癒着の構図も葬り去られ、銃撃事件の核心もわからなくなってしまうという危機感からの行動でした」

 ぽつぽつと連絡が入り始めたものの、当初は相手が警戒しているのがわかったという。胡散臭(うさんくさ)い暴露系のユーチューバーではないのか。放送禁止用語を叫ぶのではないか。ちゃんと取材しているのか。「鈴木エイト」は実名なのか。そもそも、あなたは一体何者なのか。

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