首相官邸で記者の質問に答える石破茂総理
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内閣発足から「戦後最速」といわれる解散を決めた石破茂総理。安全保障が十八番といわれるが、いまの日本には物価高や円安など、経済面での課題も多い。果たして、石破総理はこれまでの経済政策をどう捉えているのか? 経済をテーマにする小説家、榎本憲男さんが、石破氏の著書をもとに読み解く。

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安全保障を専門とする石破総理 「アベノミクス反対」は本当か?

 石破茂が内閣総理大臣に就任した。得意分野は安全保障で、日米同盟を維持しつつも、日本とアメリカは同等の関係であるべきだと述べている。基本的には安倍陣営からかなり外れた位置にいて、自民党の中ではリベラルと目されており、リベラル系の知識人からは石破総理の誕生を望む声はよく聞かれた。このような人たちの中では、正論を吐くが、それゆえに冷や飯を食わされているというイメージが浸透していたらしい。なので、彼らにとっては待望していた総理大臣が誕生したことになる。ただ、変節が激しいという声もあり、早くもそのような意見が出ている。一体、石破の本音はどこにあるのか、それを知りたくて、『保守政治家』(石破茂著、倉重篤郎編、講談社)を読んでみた。

 思った通り、経済政策では、反アベノミクス的な意見が随所に出てくる。基本的にアベノミクス的な金融緩和を否定し、増税、財政健全化、金融正常化に舵を切りたいらしい。本書では、菅・岸田の経済政策もアベノミクスのマイナーチェンジだと評価されている。ところが、最近はあまり安倍派の神経を逆なでするのはまずいと思ったのか、アベノミクスや岸田前首相の経済政策に対しても一定の評価を与えるような発言をしはじめている。ただ本音は、この本に書かれた内容であると思われる。そして、いま石破の本音を代弁しているのは総務相に就任した村上誠一郎のようで、物価高・円安はアベノミクスの負の遺産だと発言している(10月2日の就任会見にて)。

 本書に石破の本音が書かれているとしたら、経済政策においては、僕は石破政権を支持できない。例えば、本書で石破はアベノミクスに触れて――

 これはつまり、デフレをどう脱却するか、について、マクロ経済学の中で言われているメジャーなものをすべて試そうとした、ということだと私は思っています。金融緩和によって解決しようというマネタリスト、政府の財政出動によって解決しようというケインジアン、規制緩和など成長政策によって解決しようという新自由主義、これらすべてを試そうとしたのが当初のアベノミクスだったのではないでしょうか。

 と述べたあとで、

「異次元の金融緩和」によって、もともと抱えている病気が治るわけではないのです。カンフル剤で時間稼ぎをしながら、アベノミクスの三本目の矢であった成長戦略につながる構造改革を大々的に実施して生産性の向上を図ることこそが、日本経済の病に対する治療法だったのではないでしょうか。金利のつかないお金が大量に市場に出回ったことで、企業が金利負担という資本主義における付加価値創造能力を失い、安きに流れた面があったのではないでしょうか。

 と語っている。

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なぜ「石破政権を支持できない」のか?