では、循環させるにはどうすべきだったのか? それには、マネーの素をぐいと市場に押し出してマネーに変えるポンプ、2本目の矢である積極財政が必要だったという説が浮上する。つまり、前述の玉木雄一郎の意見に戻るわけである。立憲民主党の枝野元代表はかつて、「本来効果が上がるはずの金融緩和をとことんアクセルを踏み、財政出動にとことんアクセルを踏んでも、個人消費や実質賃金という、国民生活をよりよくするという経済政策の本来の目的にはつながらないところで止まっているのではないでしょうか」と、あたかも第2の矢が放たれたような前提で批判をしていた(2018年7月20日衆院本会議)。これも事実誤認に基づいた意味のない批判である。
アベノミクスによって、株価の上昇はあったものの、日本経済がデフレから完全に脱却し、上向きになったという事実はない。これは確かだろう。けれど、これをネタに、反安倍的なモチベーションで歪んだ解釈を流布するのはいただけない。石破政権のアキレス腱は経済政策にある、というのが本書を読んだ僕の感想である。