「しっかりしなさい」「弱音をはいてはいけません」。幼少期のこうした「しつけ」が子供を苦しめる場合があると本書は語る。学校教育や刑務所の矯正教育に携わった著者の子育て論は我々の常識をひっくり返す。
 例えば、我慢強い子供は決して手放しで褒められないという。しつけは必要だが、子供への抑圧を必ず伴う。過度の我慢を強いれば、一人で悩みをかかえこむことにつながりかねない。
 自分の考えを他者に明確に伝え、甘えて助けてもらう姿こそ、子供の理想ではないかと著者は提唱する。
 とはいえ、それは子供以前に、口下手、甘え下手な日本人の多くにとって難しいのが現実だ。大人が凝り固まった価値観を捨て、大人らしさ、男らしさから解放されることこそが子育ての一歩であるとの著者の指摘はもっともだ。

週刊朝日 2016年6月10日号