全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA2024年10月21日号には花王 「ロリエ」ブランドマネジャー 坂田美穂子さんが登場した。
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日用品メーカーの花王は、福利厚生の一つとして、生理用ナプキンをトイレットペーパーと同じように、企業のトイレに備品化してもらうプロジェクト、「職場のロリエ」を2022年からスタートした。
当初から賛同する声が多く、今では200を超える企業が導入している。
入社以来、洗剤やヘアケア商品のマーケティング畑を歩んできた。22年に生理用品ブランド「ロリエ」の担当になった当初、初対面の人に生理用品を説明することに、戸惑いがあった。そもそも、自分自身が生理をオープンに話す性格ではなく、夫や息子にでさえ話をしたことはない。社内でも同じで、長時間の会議中にナプキンを替えるためにトイレに行きたいなど、口が裂けても言えなかった。
生理用品を扱っている会社で働いていても、社員が大きな声で生理というワードを言うことに抵抗を持つ人は多いと感じていた。
生理をもっと過ごしやすくするために何ができるかを、チームと共に模索した。
まず、身近な社内から生理についての困りごとをたずねるアンケートを実施。仕事中、突然生理が始まったのにナプキンを買いに行く時間がないなど、自分たちと同じような悩みを抱えている社員が多いことがわかった。ならば、生理用ナプキンをトイレに備品として置けば良いのではと思い付く。
実験的に社内のトイレにナプキンを設置してみると、ナプキンの必要数、交換する回数など、さまざまな問題に直面した。試行錯誤しながら約1年かけて社員数と出勤率に応じた使用数や設置方法などを決定。活動を知ってもらうために、社内アンバサダーを募集すると、男女問わず500人を超す思いがけない数の賛同が得られた。現在は社内一丸となってプロジェクトを進めている。
「職場のロリエ」を導入した男性経営者によると、社員から、「会社が自分のことを配慮してくれている」「自分の会社を好きになった」と言ってもらえた、など、嬉しい感想をもらった。
夢は担当した商品で、より多くの人の生活を、少しでも豊かに、快適にしていくこと。「先達の声に耳を傾け、チームと共に、より良いブランド作りをしていきたい」と話す。(ライター・米澤伸子)
※AERA 2024年10月21日号